
新型コロナウイルス感染拡大を受けて東京五輪・パラリンピックの1年延期が決まったのもつかの間、招致をめぐる疑惑が浮上した。大会組織委員会理事で元電通専務の高橋治之氏が、大会招致委員会から約9億円の資金を受け取ってロビー活動をしていたと、ロイター通信が3月末に報じた。
招致委の銀行口座の取引明細証明書に、多額の支払いが認められたという。ロイターによると、高橋氏は開催地選定に影響力を持つとされた国際陸上競技連盟(現・世界陸連)前会長で、国際オリンピック委員会(IOC)委員だったラミン・ディアク氏らにロビー活動などをしていたなどと語り、招致委から支払いを受けたことにも、その使い方にも不正はなかったと答えている。
大会招致をめぐっては、2016年に約2億3千万円のコンサルタント契約に関する買収疑惑が浮上した。高橋氏の関与も取りざたされたが、招致委理事長だった日本オリンピック委員会(JOC)前会長の竹田恒和氏は否定。19年1月には、フランス司法当局が竹田氏を贈賄の疑いで調べていることがわかった。
高橋氏は五輪開催について、先陣を切って「延期」を発言したことでも知られる。JOC関係者は言う。
「高橋さんはフィクサーのような立ち位置で、IOC関係者らに『東京に投票を』と呼びかけていたのは知られた話です。表向き、招致活動は竹田さんが中心でしたが、実質的な差配は高橋さん。竹田さんは聞き役で、どっちがトップだかわからなかった。高橋さんから『五輪を持ってくるにはカネがかかる』『自分の役目は舞台裏で動くこと』と聞いた人は結構います」
スポーツジャーナリストの谷口源太郎さんは、こう指摘する。
「電通は世界陸上選手権のマーケティングもやっていましたし、高橋氏と国際陸連前会長のつながりに驚きはありません。五輪は拝金主義。うやむやにせず、追及しなければいけない。このまま何もなく開催となれば、疑惑だらけの五輪として空しさしか残りません」
開催まで1年余。説明する時間は十分にある。(本誌・秦正理/今西憲之)
※週刊朝日 2020年4月17日号