東京都立大学の木村草太教授(憲法学)は、当初の条件についてこう指摘する。

「差別する合理的な理由が見当たらないことから、憲法上、端的に言えば平等原則違反ということになります。平等権だけではなく、差別されない権利も侵害されていると言えるでしょう。特定の職業に対する差別意識があって、排除しようとしたのではないかということが強く疑われる事案だと思います」

 なぜこうした条件が設けられたのか。厚労省の担当者は取材に対して、「今回が特別ということではなくて、既存の雇用関係助成金に共通する取り扱いに準じたものとして設定したものです」と釈明する。

 もともと、風俗業を対象外にした事業主への既存の助成金があった。新型コロナの問題を受けて最初にできたのは、従業員の所得を確保するための助成金を事業主に支給する制度だった。風俗業はこの制度の対象外で、それがそのまま、フリーランスらへの「支援」の枠組みに持ち込まれたというわけだ。

 武蔵野美術大学の志田陽子教授(憲法学)は、制度の元となる考え方に問題があると話す。

「助成というのは本来、政府として推進したいものを推し進めるときに拠出するお金のことです。先ごろ話題になった芸術祭といったイベントへの助成がそうです。収入が絶たれた人たちへの生活支援に『助成』という言葉を当てることが発想の混乱を生んでいるようです」

(編集部・小田健司)

AERA 2020年4月20日号より抜粋

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