風俗関係者は休業補償の対象外とする、政府の当初の方針は撤回された。世論の反発で撤回に追い込まれた形だが、政権による職業差別はなぜ起こったのか。AERA 2020年4月20日号では、その背景に迫った。
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新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための休校に伴い厚生労働省が新設した補償制度で、風俗業などで働く人たちが対象外とされていた問題。加藤勝信厚労相は7日、「風俗関係者を対象とすることにしたい」と方針転換したが、4日前の会見ではこう断言していた。
「(風俗関係者を)公的な支援措置の対象とすることが適切なのかどうか」
「取り扱いを変える考えはない」
助成金は、学校に行けなくなった子どもの世話のために働けず、所得を失ったフリーランスの保護者らが対象だ。そこに、性風俗業やキャバクラなどで働く人たちが入らないのが「当然」と言わんばかりの発言に、首都圏のデリバリーヘルスで働く女性(25)は「悪意しか感じられません」と怒りをあらわにする。この問題では、SNSなどでも「職業差別だ」と激しい批判の声が上がった。
事態が動いたのは、会見前日の6日だった。衆院決算行政監視委員会で、寺田学議員(無所属)が「性風俗で働く人は助けを求めてはいけないと自分を責めている」と支給の対象とするよう求めたところ、菅義偉官房長官が「見直しを検討したい」と述べたのだ。
当事者の怒りが社会の共感を得ていたことを受け、新型コロナウイルスへの対応をめぐる安倍政権への批判の声がいま以上に高まることを嫌ったようにもみえる。
なぜ排除が起きたのか。まず、経緯を振り返りたい。
安倍晋三首相が新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、全国すべての小中高校と特別支援学校について、3月2日から春休みに入るまで臨時休校するよう要請したのは2月27日だった。法的な裏付けのない突然の要請だったにもかかわらず、実際に多くの学校が休校の措置をとった。