腸とは距離が離れている肺からの侵入物に対しても、腸内細菌が肺の中にあるセンサーを活性化させて対応することが、九州大学の研究により明らかにされています。
つまり、免疫力を高めるということは、こうした善玉菌や悪玉菌の数の比率をきちんと整え、バランスをとるよう努めるということです。
■腸内細菌の比率を壊す要因である、身近な薬とは……
乳児期から壮年期、老年期と、年を取ることにより菌の種類と数はどんどん変化し、悪玉菌が増えてきます。そして、この腸内細菌の比率を大きく壊す要因として、身近な薬が存在します。
それは、病院でよく出される「抗生物質」、つまりは抗菌薬です。腸内にいる善玉菌も、名前のとおり菌の一つなので、抗菌薬によって殺されてしまうわけです。そうすると当然、腸内細胞の数が変化し、便秘や下痢になったり腸の活動が妨げられたりということが起きてきます。
風邪をひいたとき、病院で風邪薬として抗生物質を処方されたことはないでしょうか?実は、私達が普段よくひいている風邪も、今回の新型コロナやインフルエンザと同じく、ウイルスにより引き起こされるものなのです。ですから、抗菌薬を飲んだところで効果はありません。
風邪のときに有効な治療は対症療法といって、熱が高くなったら下げる、体が痛くなったら痛みを取るという、さまざまな症状に各々対応していくというスタイルです。なぜか昔から、風邪をひいたときに抗菌薬が処方されてきたようですが、皮肉なことに抗菌薬は風邪を治さないどころか、腸内細菌のバランスを崩して免疫を低下させてしまう恐れがあるのです。
もちろん、菌による炎症など抗菌薬が有効な病気のときはしっかり飲むべきですが、単なる風邪など、必要ないときにむやみやたらに抗菌薬を服用すべきではありません。近年は見直されてきてはいますが、免疫力を下げないためにも注意が必要です。
では、「ウイルスに対してどんな薬を飲めばいいのか?」という話になりますが……現状では、「ウイルスを倒すことができる薬」なんてものは存在しないのです 。感染したウイルスを殺すには、私たちは自分の免疫を頼りにする以外ありません。だからこそ今は、とにかく免疫を高めるよう、最大限に努めるべきなのです。