僧侶とジャーナリスト。二つの顔を持つ鵜飼は「宗教と社会をつなぐのが自分の役目」と語る(撮影/楠本涼)
僧侶とジャーナリスト。二つの顔を持つ鵜飼は「宗教と社会をつなぐのが自分の役目」と語る(撮影/楠本涼)
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 正覚寺住職・ジャーナリスト、鵜飼秀徳。京都にある正覚寺の住職であり、『寺院消滅』や『仏教の大東亜戦争』などの著書を持つジャーナリストでもある。そのどちらもが、鵜飼秀徳にとっては「人々の間から争いを無くし、幸せにみんなが暮らす」ことでつながっている。信仰心は薄れ、「葬式仏教」とも言われる。宗教とは何か、信仰とは何かを改めて問われる時代に、鵜飼は何を見つめるのか。

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「鵜飼さんのお寺はこの先かしら」

 11月の京都・嵯峨野。紅葉を楽しむ観光客で賑(にぎ)わう道を取材先を目指し歩く途中、前方の4人連れの女性たちの声が聞こえた。車椅子の40代女性、その母親らしき人、つきそう2人はヘルパーだろうか。偶然にも筆者の訪ね先を彼女たちも探している様子だ。間もなく寺につくと、女性たちは門前で私を待っていた袈裟(けさ)姿の僧侶に気づき、「あらー、鵜飼さん」と歓声をあげた。

 浄土宗・正覚寺の33代目住職、鵜飼秀徳(うかいひでのり)(48)は、2019年4月からKBS京都ラジオの番組「さらピン!キョウト」で木曜日のコメンテーターを務める。約500年続く寺の住職と、気鋭のジャーナリストの二つの顔を持つ鵜飼が、アナウンサーの梶原誠と昨今のニュースについて語り合う関西の人気ラジオ放送だ。

「娘が鵜飼さんの大ファンで、私も毎週楽しみに聞くようになったんです。話が面白くて声も素敵で。まさか会えるとは思わなかった」。大阪府高槻市に住むその親子は、鵜飼の出演番組を毎週カセットテープに録音し、繰り返し聞いているという。「よくぞ来られました。こちらの紅葉がきれいですよ」。突然の来客をにこやかに迎えた鵜飼は、草木の手入れが行き届いた寺の境内を自ら案内する。庭を堪能した彼女らの昼食がまだと知ると、近場のレストランに電話をかけて予約し、記念撮影してから見送った。

「うちは観光ガイドにも載ってない『知る人ぞ知る寺』なんですが、たまに訪れてくれる方は歓迎しています」

 多くの京都の寺が観光客から拝観料を取るのに対し、嵐山の名所・竹林近くにある正覚寺では拝観料を取っていない。それは鵜飼が「寺は万人に開かれた場であるべきだ」と考えているからだ。

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