■阪神:田淵幸一
(通算成績:1141試合 1016安打 打率.264 320本塁打 735打点)
「ホームランアーチスト」と呼ばれた長打力は素晴らしく、打てるキャッチャー=田淵と認識しているファンも多いだろう。「世界の本塁打王」王貞治が同時期に活躍していたため、本塁打王になったのは43本を放った75年のみだが、阪神在籍の10年間で40本塁打以上を2度、30本塁打以上を6度マークした球史に残る長距離砲だ。守っても186cm、90kgの大柄な体に似合わず動きは俊敏で、ルーキー時代の69年を含め4度盗塁阻止率で5割以上を記録している。阪神時代はリーグ優勝の経験はなかったが、5シーズンで2位となっており、当時黄金期を迎えていた巨人に立ち向かう阪神を象徴する選手の一人でもあった。
田淵に対抗できる実績があるのは、現在はチームの監督を務める矢野輝弘(現在の登録名は矢野燿大)だろう。プロのキャリアは中日でスタートさせたが、98年に阪神に移籍するとレギュラーの座をすぐさま奪取。99年以降は野村克也、星野仙一という名将の下で活躍し、03年には打率.328、14本塁打、79打点をマークするとともに、エース井川慶らを上手くリードし、チーム18年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献した。11シーズンで正捕手を務め、05年にもリーグ制覇を経験している。
■広島:達川光男
(通算成績:1334試合 895安打 打率.246 51本塁打 358打点)
“グラウンド上の詐欺師”と呼ばれ、どちらかというとコミカルな部分が取り上げられることが多いが、捕手としての能力も一流だった。打撃では86年に打率.274、9本塁打、46打点をマークしたのがキャリアハイと目立った活躍はなかったが、チームが日本一となった84年には、阪急との日本シリーズ第6戦で本塁打を放ち勝利に貢献するなど、勝負強さが光った。肩も圧倒的な強さはなかったが、キャリアの盗塁阻止率は.366と高い水準にある。また、野村克也も得意とした“ささやき戦術”の使い手でもあり、常に相手選手を惑わせようとする姿勢は、日本のプロ野球史上でもトップクラスだろう。
勝てるキャッチャーという意味では、達川の前にレギュラーだった水沼四郎が当てはまる。打撃では目立った成績はないが、79、80年に2連続で日本一に輝いた時の正捕手で、肩の強さ、キャッチングの上手さ、大胆なリードを武器に長年チームを支えた。有名な「江夏の21球」の時に江夏の球を受けていたのも水沼である。現在正捕手を任されている會澤翼は打撃力も高い。ここ2年は2ケタ本塁打を記録し、18年には規定打席に達しなかったが、106試合の出場で打率は3割を超えている。チームは16年から3連覇を果たすなど、強さを誇っているだけに着実にキャリアを積めば、球団を代表する捕手になれる可能性もある。