西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、コロナウイルス感染症の猛威の中、いまだかつてない事態に陥っているプロ野球界について、深刻な状況を指摘する。
【春季リーグ戦開幕の延期を発表する東京六大学野球連盟の井上崇通理事長】
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報道陣との接触も極力行わず、選手はほぼ単独練習か自宅待機の日々。オンライン会見をやる選手もあれば、ユーチューブやツイッターなどによる動画配信、さらにインスタグラムへの写真投稿。今はスポーツ選手が色々な形で情報発信できる。
野球界も12球団の動きが止まっている現状で、選手のそういった声がよりクローズアップされる。自らが責任を持って口を開く。発信力も今やプロ選手にとって大事な要素の一つなのだから、この機会に磨きをかけてもらいたい。
外出自粛要請のみならず、飲食店などの営業自粛要請で、日々の稼ぎが失われている方たちがいる。政府は補償とセットで議論を進めているが、おのおの事情は異なる。一律で平等な補償というものは難しい。PCR検査一つにしても、検査自体を受けるまで人によって時間差が生じている。各自治体によって状況は違うのだから、公平性を保つことはできないよね。
プロの世界は生きるか死ぬか。平等や公平なんて理論は本来であれば存在しないが、ただ、時間は公平に与えられるべきである。野球選手にとっての時間とは、内容と結果を問うことができる試合である。その日常が失われている状況で、選手の優劣を決めて戦力外にすることはできるのだろうか。仮にシーズンが70試合程度しか行われなかった場合、それでも例年どおりに各球団10人前後の戦力外通告ができるだろうか。
まだプロは各球団が資金力を有しているから、戦力外を凍結したとしても、何とかなるかもしれない。しかし、社会人野球チームはどうだろう。すでに地方大会や日本選手権の中止が発表された。チームの中で衰えが目立つ選手に野球から身を引くよう勧告できるだろうか。もし、野球部全体の人数が変わらなければ、新人選手を受け入れることも困難になってしまう。アマチュアは深刻だ。