いまや東大でなく海外名門大に直接進学することも珍しくなくなっている。一方で、ハンガリーやチェコ、マレーシアなど意外な国の大学も人気を集める。いったいどうなっているのか。最新の進学事情を探った。
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「米国の大学を志すようになったのは、世界大学ランキングの上位を英語圏の大学が占めていたからです」
こう話すのは、桐朋(東京)出身の西川真寛さん(19)。リベラルアーツ(教養)教育に力を注ぐ名門アマースト大(米国)の1年生だ。昨年、東大理科一類に合格して半期だけ在籍し、9月に今の大学に入学した。
西川さんが感じた日本と米国の大学の違いは、入学基準だ。日本では入試で合格点を取れば入れる。一方、米国では高校3年間の成績や課外活動も含めて評価される。どういった考えで学び、活動してきたか、そして今後どう成長するかがみられるという。
「日本では勉強にしても就職にしても“皆がたどる道”を選ぶ人が多いのですが、アマースト大では自分のキャリアを追求している人が多く、自分で考えて行動し、チャンスをつかんでくる。こうした点は、日本の大学にはない米国の大学の強さだと感じています」
今、西川さんのように東大ではなく、海外大を目指す人は珍しくない。東大合格者が多数輩出する高校の海外名門大の合格状況をまとめた。
東大合格者ランキングで毎年トップ5に入る筑波大附駒場(東京)や灘(兵庫)は、英国の教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーションが発表する世界大学ランキング(20年版)で7位のハーバード大や8位のエール大(ともに米国)などに合格者を出している。ちなみに、東大は36位だ。
特に渋谷教育学園渋谷(東京)は合格大学が多い。海外大合格者数も55人。高際伊都子副校長はこう語る。
「進学先の選択肢として国内も海外もあると指導している点が大きい」
同校は中学からの入学者しか受け入れない中高一貫校。入学したときから先輩たちの合格実績を見ており、自然と海外の名門大も選択肢の一つとして見られるようになるという。
「最近は東大と海外大に合格して、悩む生徒が出てきています。東大に進学したら何ができるのか、海外大とどちらがいいのか、考えるようになっている。海外大が選択肢として出てきたことで、東大も(偏差値ではなく)中身が見られるようになりました」