JRの他路線をピックアップすると、JR東日本は東北本線上野~尾久~黒磯間に「宇都宮線」の路線愛称を導入。東武鉄道にも同名の路線はあるが、並行していないことや、普通・快速列車は黒磯止まりで東北まで行かないことなどから、沿線住民にすんなり受け入れられたようである。

 JR北海道は札沼線全線(函館本線札幌~桑園間も含む)に「学園都市線」の路線愛称を導入。沿線の札幌市側は1980年代に大学の移転やベッドタウン化が進み、桑園~北海道医療大学間が交流電化されるほどの発展を遂げた。

 しかし、非電化区間の北海道医療大学~新十津川間は列車の運転本数と利用者数が極端に少なく、2020年5月7日に廃止される(列車の運転はすでに終了)。

■愛称で観光路線の魅力をPR

 JR九州では2001年の篠栗線・筑豊本線の電化に際して、黒崎~博多間に福北ゆたか線の路線愛称を付けた。これは列車の運転区間に即した愛称で、どちらかというと、先述の電車系統名称に近い。

 JR九州の路線愛称には、このほかに香椎線の西戸崎~香椎間に「海の中道線」、肥薩線の八代~吉松間に「えびの高原線」、久大本線に「ゆふ高原線」などがある。

 また、JR四国では徳島線に「よしの川ブルーライン」、牟岐線に「阿波室戸シーサイドライン」、予土線に「しまんとグリーンライン」、予讃線の向井原~伊予大洲間に「愛ある伊予灘線」の愛称を設定した。

 JR九州やJR四国の路線愛称の多くは、日常利用や列車の運転区間を示したものというよりも、観光利用を意識した愛称といえよう。なお、JR東海では路線愛称を設定していない。

■東武鉄道も路線愛称に参戦

 私鉄では東武鉄道が2012年3月17日から、東京スカイツリータウン開業に備え、伊勢崎線浅草・押上~東武動物公園間に「東武スカイツリーライン」という路線愛称を導入した。浅草~北越谷間はほとんどの駅のホームで、東京スカイツリーが眺められる。

 続いて2014年4月1日から、野田線全線に「東武アーバンパークライン」の路線愛称を導入。定期特急や急行の運転開始、宅地開発など、路線自体は成長しているが、6年たっても路線愛称は浸透していない模様だ。

 今後も路線愛称が増えることも考えられる。浸透する、しないは、引き続きネーミング次第であろう。(文・岸田法眼)

岸田法眼(きしだ・ほうがん)/『Yahoo! セカンドライフ』(ヤフー刊)の選抜サポーターに抜擢され、2007年にライターデビュー。以降、フリーのレイルウェイ・ライターとして、『鉄道まるわかり』シリーズ(天夢人刊)、『論座』(朝日新聞社刊)、『bizSPA! フレッシュ』(扶桑社刊)などに執筆。著書に『波瀾万丈の車両』(アルファベータブックス刊)。

[AERA最新号はこちら]