重度脳性まひの高岡杏さん(中央)が実行委員長に選出され、準備を進めている筑波大学の学園祭。今年度のテーマには「多様性」の言葉を入れるという(撮影/写真部・小黒冴夏)
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電動車いすに乗って学生生活を送る。筑波大学では授業のサポートや校内移動時のタクシー手配などの支援体制が充実している(撮影/写真部・小黒冴夏)

 例年3万人超が来場する筑波大の学園祭。その実行委員長に、重度脳性まひの学生が選ばれた。電動車いすに乗り、iPadを使い会話する。彼女たちが掲げる学園祭のテーマは「多様性」だ。AERA 2020年4月27日号掲載の記事を紹介する。

【写真】電動車いすに乗って学生生活を送る高岡さん

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 11月の初旬に3日間にわたって開催される筑波大学の学園祭「雙峰(そうほう)祭」は、例年3万人超が来場する大イベントだ。学生の選挙で選ばれる2020年度の実行委員長に、重度脳性まひの高岡杏さん(19)が就いた。約80人の大所帯となる実行委員を率いて準備を進めていく。

 高岡さんは昨春、都立高校を卒業し、筑波大学に入学した。食事やトイレ、入浴などに介助が必要で、重い障害のある人が日常生活で介助を受ける「重度訪問介護」のサービスを利用し、ヘルパーに支えられながら学生寮で一人暮らしをしている。まひの影響でうまく発声できないため、コミュニケーションにはiPadを活用。手もまひの影響でコントロールが難しいため、ひじを使って文字を入力する。

 昨年12月の実行委員長選挙に立候補した際には、iPadの読み上げ機能を使って演説した。「忙しくてきつく、ブラックなイメージがある実行委員の仕事をクリーンにしていきたい」と訴える高岡さんに支持が集まり、当選を果たした。

 前委員長から「次期委員長をやる人がいない」と聞き、手を挙げた。19年度に実行委員で高岡さんと同じ部局を担当していた藤田優香さん(19)が「立候補する感じは全くなかったし、衝撃でした」と振り返ると、高岡さんは「ぎりぎりまで悩んでいたからみんなに言うのが遅くなっちゃって」と笑う。

 委員長選の後に行われる副委員長選に立候補すると決めていた萩原健太さん(20)は、

「苦労することもあるだろうと思ったけど、ハンディキャップとかはうまく支えてやっていけるんじゃないかと思って杏ちゃんに投票しました」

 実行委員の中村勇太さん(19)は高岡さんの演説が印象的だったという。

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