開幕初打席で本塁打を放った外国人は、92年のマーシャル(日本ハム)以来史上5人目だが、満塁と初振りでの一発は初めて。
王監督も「やったね。見ていて打つ予感はあったけど、まさかホームランとはね。さすがメジャーだよね」と絶賛したが、本人は「最低でも外野フライと思っていたけど、たまたまホームランになっただけだよ。去年の開幕戦では2本打っているから、もう1本どこかで打ちたかったな」と軽く言ってのけた。
翌2日も6回に中越えに125メートル弾、同4日のロッテ戦(千葉マリン)でも初回に決勝二塁打を放つなど、開幕から4試合連続打点を記録したが、これで「日本の野球はこんなものか」とタカをくくったのか、しだいに“問題児”の本性を表してくる。
「微熱がある」と訴え、4月14日の近鉄戦(福岡ドーム)をスタメン発表後に離脱すると、同16日にも右膝の故障を理由に欠場。5月に入っても何かと理由をつけて「休みたい」を連発した挙句、同26日、「サンディエゴで経営しているアパートと美容院が心配になった」という人を食ったような理由で無断帰国してしまった。
その後、7月に再来日し、同29日の西武戦で5打数4安打と活躍も、わずか9試合に出場しただけで、8月11日に膝の故障を口実に2度目の帰国。我慢に我慢を重ねてきた球団側も、ついに堪忍袋の緒が切れ、即刻解雇した。これに対し、ミッチェルは年俸4億円の全額支払いを要求し、裁判沙汰に発展。“金と共に去りぬ”と皮肉られた。(文・久保田龍雄)
●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。