他方で、この時期を前向きに捉える生徒もいる。

「学校が休校になって良かった」

 そう言うのは、北海道帯広市の私立校に通う3年生の女子生徒。国公立の大学を目指している。北海道と札幌市による「緊急共同宣言」が4月12日に出され、その翌日から休校に。予習のための課題が出されたが、すぐに終えた。今では受験勉強に1日12時間取り組んでおり、基礎固めの学習をしているという。

「通学時間が節約されたのは大きい。受験に関係がない科目を学ばなくても済むのもいいです。先生が『この時期に頑張ろう』と話をしてくれ、周りの友人も勉強のやる気を高めました。休校を前向きに捉えている人も多いです」

 オンライン授業を積極的に活用しようとしている動きもある。注目を集めているのは、授業のすべてがオンラインになっている東進ハイスクールだ。通常通りに授業を実施。模試も東進生に限り、オンラインで実施した。4月10日からは東進生以外の高校生を対象に無料のオンライン講習を公開。申し込みが殺到し、1週間で1万件を超えた。

 東進ハイスクールを運営するナガセの市村秀二広報部長は、こう話す。

「スケジュールを逆算すると、受験生は今、漫然と過ごしている暇はない」

 休校しているぶん、夏休みが短くなることが考えられる。本来であれば、夏休みの時間を使って受験生は実力をつけるが、その時間が今に前倒しになっているとみる。

「東進生の受講状況を見ると、例年よりも多い傾向がある。つまり、しっかりと取り組んでいる生徒は実力を今つけているということ。生徒には電話やZoom(テレビ会議サービス)などで『いま全力で取り組もう』と指導している。この時期をどう過ごすかで合否が分かれると思います」(市村部長)

 高校受験にも影響は出ている。高校受験向けに実施されている模擬テスト「都立そっくりテスト」(新教育研究協会)や「都立Vもぎ」(進学研究会)などが相次いで中止になった。塾を閉め、オンライン授業に切り替えるところも多い。

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高まる親の不安