もうひとつ、住宅を選ぶ基準に「脱満員電車」を加える人も増えるのではないか。

 爆発的に感染が広がった米のニューヨークでは、地下鉄の混雑が感染拡大の大きな要因だったとの分析が出ている。日本でもこれまで以上に満員電車を不安視する人は増えるだろうし、そもそもリモートワークによって満員電車での通勤から逃れた人々が、再びそこに戻るのはかなり憂鬱なはずだ。

 国土交通省の資料によると、2018年度の首都圏の鉄道混雑率1位は東西線の「木場」―「門前仲町間」、2位は横須賀線の「武蔵小杉」-「西大井」間である。大阪では御堂筋線の「梅田」―「淀屋橋」が乗車率151%となっている。

 大阪の御堂筋線は利用せざるを得ない区間だが、首都圏の東西線沿線や武蔵小杉駅からの上り方面は、マンション選びの際に敬遠することもできる。「脱満員電車化」が進めば、今後、そうした地域のマンション需要は減退するかもしれない。

 以上、現状で想定できるコロナ後のマンション市場で起こり得る現象を考えてみた。

 もちろん、未曽有の事態ゆえ、実際のところはコロナが終息してみないとわからないところは多い。

 だが一つ言えるのは、今私たちが常識だと考えているマンション市場は、「コロナ後」にその姿を大きく変える可能性が極めて高いということだ。(住宅ジャーナリスト・榊淳司)

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