ステイホームにロックダウン。毎日耳にするようになったコロナ禍の言葉。英国のエリザベス女王、米ニューヨーク州のクオモ知事、カナダのトルドー首相、ニュージーランドのアーダーン首相のそれぞれの言葉を、ジャーナリストで英語講師の鈴木あかねさんが英語の観点から読み解いた。
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海外報道に触れることで多面的な情報収集ができることはもちろんだが、そのお国柄や背景も浮かび上がってくる。
世界各国が一斉に「拡大する新型コロナウイルスへの対処」という課題を与えられた状況で、各国首脳らのリーダーシップも比較された。ここでは政策の成否には触れず、英語圏のリーダーの言葉の力に注目した。
鈴木さんが指摘するのは「それぞれがナショナリズムをくすぐる表現を用いた」点だ。英国なら「プライド」、カナダは「思いやりと団結」、ニュージーランドは「親切さ」。
「行動制限を強いるにあたり『私たちならできますよね』と持ち上げながら、人々を励まし、不安を和らげ、勇気を与える。モチベーション管理のお手本のような言葉ですよね」
なかでも「今回は本気のスピーチだった」と鈴木さんが見るのが、英国のエリザベス女王。「プライド」という言葉を繰り返して、英国人の誇りに訴えかけた。
「EU離脱による英国分断への危機感も強かったのではないでしょうか」
自制心を持ち、静かに笑みをたたえて仲間を大事にする、まさにコリン・ファースが『ブリジット・ジョーンズの日記』などで演じたような「理想の英国人像」も垣間見える。
一方、米ニューヨーク州のクオモ知事は「逃げない」姿勢で市民の信頼を勝ち得た。移民歓迎国のカナダのトルドー首相は難しい単語を一つも使わず、誰にでも伝わりやすい言葉で協力を呼びかけた。
トルドー首相が説明する「ソーシャル・ディスタンシング」は、日本でもそのままカタカナになったほど一気に広がった。
もともとsocial distance(社会的距離)は社会学や文化人類学の用語で、social distancingは感染症の予防戦略を示す言葉として使われてきた。