世界中で感染拡大を続ける新型コロナウイルス。終わりが見えない闘いのなか、医療機関は他の診療や治療を制限しなければならない事態に追い込まれている。
京都市の中心部に位置し、34の診療科を持つ京都府立医科大学病院で、大腸がんの内視鏡治療を専門とする吉田直久医師に話を聞いた。がん治療はどのような影響を受けているのだろうか。
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「院内のコロナ感染はすべての医療行為の停止につながります。そのため、感染リスクを減らすため大腸がんを発見するために必要不可欠な内視鏡検査は、制限せざるを得ない状況になっています」
そう話すのは、京都府立医科大学病院の消化器内科で大腸がんの内視鏡治療を専門とする吉田直久医師だ。
大腸がんは、すべてのがんの中で最も罹患者が高く、さらに女性では死亡数が最も多い。結果、早期の発見と治療が望まれる。しかし、いま100%の診療で多くの患者さんのために十分な検査を行うことは、院内感染を引き起こす危険が高まってしまう。
院内感染を防ぐために、内視鏡検査の際はマスクや防護服などのPPE(personal protective equipment)の装着を徹底しているが、PPE不足のため制限して使用しており、今後さらに深刻になる可能性もあるという。
■やむなくすべての患者に感染を想定。PCR検査数はすぐに増やすべきだ
「消化器内視鏡検査は、口や肛門から器具を挿入するため新型コロナウイルスの患者さんであれば便や唾液、せきから感染する可能性があります。軽症や無症状のコロナウイルス感染者も報告されているため、検査時にはすべての患者さんにコロナウイルス感染があるかもしれないという想定のもとでマスク、ゴーグル、ガウン、キャップ、グローブというPPEを装着することが、我々を防護するための手段となっています。本来は患者さんごとに替えるべきですが、その余裕がありません。通常のようにたくさんの患者さんへの検査数をこなすことは感染率を高くすることになってしまうため、これまで行ってきた内視鏡検査数のわずか20%程度の検査に、現在は制限をしています」