奨学金の返還滞納者情報が金融機関などに情報提供されたニュースを聞いて、早稲田大学国際教養学部教授の池田清彦教授は、奨学金取り立ては国家的詐欺だと憤る。
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 日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金の返還を滞納して、金融機関や信販会社に情報を提供された人が一万人を超えたとニュースがあった。奨学金は本来は国家有為の人材を育成するために、優秀でかつ親が手元不如意の学生を支援するためにはじまったのだろう。
 滞納している人の大半は経済的に苦しいのだろう。信用情報機関に登録されると住宅ローンも借りられず、クレジットカードも使えなくなるかもしれない。私が借りた頃は無利子のタイプだけだったが、今は年利最大三%の利子が付くものが主流というから滞納している間に利子が膨らんでさらに苦しくなるに違いない。将来を夢見て奨学金を借りて、大学や大学院を出たものの就職もままならず、奨学金が返せずドツボにはまるとは気の毒なことだ。
 自己責任と言えばそれまでだが、多くの人は大学卒や大学院卒という幻想に騙されているのではないかしら。成績優秀で、貸与ではなく返還義務がない給付奨学金がもらえるならばともかく、学問に興味はないし、勉学に励むつもりもないのに、みんなが行くから私も行きたいという理由だけで、親のスネをかじるだけでは足りず、借金までして大学に行っても無意味ではないか。怒る人もいるかと思うが、はっきり言ってサラ金でお金を借りてパチンコしているのとさして変わらない。

※週刊朝日

 2012年4月20日号