感染性の病気は、自然界の鳥や昆虫と同様、国境も民族の壁も区別しません。コロナウイルスの蔓延は、まさにイスラエルとパレスチナ間においてその事例となりました。
高い壁がイスラエルとパレスチナ自治区の間を切り離しているにもかかわらず、イスラエル人とパレスチナ人のコミュニティーは隣接しています。またイスラエルとパレスチナの経済は複雑に絡み合い、常に労働者や商人の行き来が合法・非合法でおこなわれています。またパレスチナ自治区は港湾施設を独自に使用できないため、商品の輸出入は全てイスラエルの施設を通さなくてはなりません。多くのパレスチナの村の近くにはイスラエルの入植地があります。いくつかのパレスチナの病院はイスラエルの病院からサービスを受けています。したがって、コロナウイルスが一方のコミュニティーだけでなく他のコミュニティーにも蔓延するという共通の恐れがあったことは、驚くことでありません。
イスラエルとパレスチナは政治と歴史に対して大きな意見の相違があり、イスラエルがパレスチナ領域の広い部分を占有しているという事実にもかかわらず、二つの民族は、政治的な論争をクールダウンさせて、コロナと戦うために一緒に働く必要があると理解しました。
あるイスラエルの解説者は次のように語っていました。「コロナ禍の長所は、それがイスラエル・パレスチナ紛争に関連がなく、政治問題を含まずに共に直面する問題と戦うことができるという事実です」
過去3カ月に幾つかの注目すべき協力がありました。それは互いの憎悪を超えるものでした。3月にイスラエルとパレスチナ相互の医療チームが、共同セミナーを行いました。そこでは感染者をどのように隔離するかや、病院で働いている医療スタッフを保護する方法などの情報交換がされました。イスラエルとパレスチナの活動家は、ユダヤ人とアラブ人の混合都市(例えばエルサレム、ヤッファ、アッコやハイファ)で、コロナウイルスの危険性を住民に浸透させるために一緒に働きました。
パレスチナの都市でのコロナの広がりが同時にイスラエルの都市にも広がるという認識をしたイスラエル当局は、何万もの医療マスクや消毒剤、医療検査キットをパレスチナの病院に提供しました。また通常は互いにコミュニケーションのないイスラエルとパレスチナの蔵相が、双方のコロナによる経済的影響を抑制する方法について協議するために、数回の情報交換を3月と4月に行いました。
私が住んでいるエルサレム市では、そうした協力はとても多くみられました。エルサレムはパレスチナ人側の東とユダヤ人側の西に分断されていますが、双方のNGOが協力して貧しいパレスチナ家族に食料などの救援物資を配りました。イスラエル当局は、隔離する必要があるパレスチナ人のためにホテルでの宿泊を準備するのを手伝いました。右派でもあるエルサレムのモシェ・レオン市長は、自主的にこれらの協力作業の一部を差配しました。