就職活動のスケジュールは、これまで経団連が定めていた「就活ルール」を引き継ぐ形で、21年卒採用からは政府が主導。3月に説明会など広報活動やエントリーの受け付けが始まり、6月に面接など選考活動が解禁されるルールを作ったが、ここ数年、就活市場は売り手が優位で、採用競争が激化しておりルールは形骸化。企業が早期に優秀な学生を囲い込むため、大学3年の夏などに開催されるインターンシップ(就業体験)が主戦場になり、早期化が進んでいた。
特に今年は夏に東京五輪・パラリンピックを控えていたため、政府も、都心で宿泊先を確保しづらい地方の学生や、ボランティアに参加する学生への配慮を求めており、各企業も例年よりも早くに採用活動をスタートさせ、7月上旬までには採用を終えるような日程を組んでいた。
■インターン優遇が顕著
そんな売り手市場を、新型コロナが襲った。
感染拡大を受けて一変。3月以降に開かれる予定だった大規模な合同企業説明会が相次いで中止され、各大学で開かれる企業の説明会も取りやめになり、企業が学生との接点を持ちにくくなった。結果、企業がインターンシップに参加した学生を中心に選考や内定出しを早めた。
就職情報サイト「キャリタス就活」を運営するディスコの5月1日時点の調査では、学生が内定を得た企業のうち、インターンシップに参加した企業の比率は61.1%と、前年同時期と比べて8ポイント高く、今年の就活はインターンシップ優遇がより顕著となっている。
4月に入って内定率の伸びが鈍化し、ANAなど採用を中断する企業も出てきている中、どこからも内定をもらえないのではないかと不安を抱く学生もいる。だが、就職情報会社マイナビの高橋誠人(まこと)編集長は内定出しのペースが落ちた要因は「採用数が減少しているのではなく、選考スケジュールが後ろ倒しになっているため」とし、過度に悲観する必要はないと言う。
事実、現時点で採用を取りやめた企業はごくわずかで、緊急事態宣言発令後にマイナビが実施した調査でも、採用数に関しては当初の予定通りという企業が80%以上だった。