とりわけ、学生や大学職員への不安を増幅させたのは、ANAとJALの採用活動中断の知らせだった。ある大学のキャリアセンターは「学生たちを奈落の底に突き落とした」と落胆するように、21年卒生の人気企業ランキングでも文系上位に位置する両社の決断の影響は大きい。
旅行や航空業界を志望する男子学生(21)が嘆息する。
「50社ほどエントリーし、うち10社は採用活動が中止になりました。ANAを含めて志望業界の多くが影響を受けています」
男子学生が航空や旅行に志望業界を絞ったのは昨年12月のこと。日本ではコロナへの危機感はほとんどなかったが、雲行きが怪しいと感じたのは、参加予定の説明会の9割が延期やウェブへ切り替わった3月頃のこと。
「じわじわとコロナの影響を感じ始めました。でも、まずは就活をやり切って納得できる道を選ぶことがベストだと思っています」(男子学生)
ウイルスの終息や経済活動の再開など、はっきりと見通しが立たない日々のなかで就活生たちは前に進んでいる。それは大学側も同じだ。
普段は就活生でにぎわう大阪大のキャリアセンター。就職相談室の明かりは消え、学生の姿はなし。緊急事態宣言発令を受け、同大では学部生の入構を原則禁止とした。就活相談もすべてオンラインに移行。阪大の他にも、政府や自治体の要請に応じてほとんどの大学が入構制限を実施し、それに伴い就活支援も非対面になっている。
「就職の明治」として名高い明治大も4月以降、就職キャリア支援センターを全面閉鎖した。
「週2回のペースでオンライングループ相談会を開き、講義形式と質疑応答で学生と相互にやり取りしています。コロナの影響を不安視する質問も多くあります」(明治大就職キャリア支援センター担当者)
自宅にこもる就活は他の学生の動きが見えづらく、ネット上に溢れる情報をうのみにして落ち込む学生も多くいるという。相談会を通じて他の就活生の悩みを知ることが安心感につながり、刺激にもなっている。