プロ入りを決めた藤井聡太三段(当時)=2016年9月
プロ入りを決めた藤井聡太三段(当時)=2016年9月

■藤井の活躍で羽生に注目が

 藤井は現在、A級順位戦でも好成績をあげ、名人挑戦権争いでトップを走っている。4月からは渡辺名人に藤井が挑戦する名人戦七番勝負が始まっている可能性も高い。もし藤井がそこで七冠を達成すれば、羽生以来史上2人目の偉業となる。

 さらにこれから始まる王座戦のトーナメントにおいて、4連勝して挑戦権を獲得すれば、秋に開幕する永瀬王座との五番勝負が史上初の八冠チャレンジとなる可能性もある。

 藤井が勝つと、いつもなにかしらの記録に近づく。藤井自身が興味あるのは棋力向上と盤上の真理であって、そうした数字にほとんど興味はない。一方で観戦する側は、藤井の盤上での妙技に驚き、次になにかしらの記録を目の当たりにさせられ、そこでもさらに驚く。

 直近では、藤井は王将戦第3局の勝利によって、先手番で22連勝を達成した。ほとんどトップクラスとしか当たらない中、今年度は先手番でわずかに1回負けただけで25勝1敗(勝率0.962)。これもまた形容しがたい数字だ。

 ではその先手番22連勝が新記録かというと、実はそうではない。過去には28連勝という、とてつもない記録が打ち立てられている。

 それを達成したのはほかでもない、1989年当時、19歳六段だった羽生である。藤井の活躍によって、先人の偉大な記録に改めてスポットライトが当てられる現象も、近年の将棋界ではよく見られる。

 52歳になってなお、羽生がタイトルにからんでいる時点で驚異的なことだ。その上で王将復位を成し遂げれば、歴史的な大偉業といってよいだろう。

 一方でまた藤井が羽生を倒して記録を伸ばせば、羽生の過去の記録も注目されることになる。

 王将戦第4局は2月9、10日、東京都立川市でおこなわれる。藤井が3勝目をあげて走るのか。先手番の羽生が勝ってタイに持ち込むのか。注目の七番勝負は、いよいよ佳境を迎える。(松本博文)

初タイトルの棋聖を獲得した直後の記者会見で=2020年7月
初タイトルの棋聖を獲得した直後の記者会見で=2020年7月

週刊朝日  2023年2月17日号

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