誰が都知事の座を射止めたとしても、今後、待ち受けるのがおカネの問題だ。
東京都はコロナ対策の休業協力金や臨時医療施設などに多額の予算を投じた。これにより、自治体の“貯金”にあたる財政調整基金の残高が約9300億円から500億円にまで激減してしまったのだ。仮に小池氏が2期目を務めるにしても、財布がすっからかんということになる。元東京都副知事で明治大学名誉教授の青山やすし氏がこう語る。
「財政調整基金が1千億円を割ると、資金繰りの点で危険性があります。その水準になってしまうというのは、私が石原都政で財政担当副知事だった2003年の頃に逆戻りですよ。当時、東京都はしきりに財政危機だと言われ、石原さんも記者会見で『ひでえうちに嫁に来た』と、たびたび言っていましたからね」
前出の澤氏もこう言う。
「石原さんの初期の頃には東京都の財政は破綻寸前までいった時期がありました。その時はいろいろな事業部を削りましたし、人も削らざるを得なかった」
その後、歴代の知事がコツコツ資金をため続けたことで東京都は“お金持ち自治体”になったわけだが、コロナ禍によって元の木阿弥になってしまったことになる。前出の森都議はこう語る。
「一人でも多くの命を救うため、国よりも一歩進めてかなり大胆に協力金という形で出してきましたが、アフターコロナは都もカネがない。これからはかなり緊縮財政を取る必要があるでしょう。予定されていた築地市場跡地の再開発や旧『こどもの城』の改修などにはちょっと待ったをかけながら、財政を立て直していかないといけないでしょうね」
前出の青山氏は、今回の都知事選では本来、財政の立て直し策こそが争点になるべきだとして、こう語る。
「多くの地方自治体の財政は、国から来る地方交付税に依存しています。ところが、東京都にはこの地方交付税が入ってこず、企業からの法人税に依存しています。つまり、経済の活性化で企業の利益が上がって、初めて法人税が入ってくる。都知事選の争点は、いかにして経済を活性化させるかになると思います」