社会保険労務士の小泉正典さんが「今後いかにして、自分や家族を守っていけばいいのか」、主に社会保障の面から知っておくべき重要なお金の話をわかりやすくお伝えする連載の第4回。
前回まで今すぐ必要な新型コロナウイルスに関連した社会保障などを中心に話を進めてきましたが、今回はこの5月に決定したばかりの年金改正について解説します。
* * *
年金は、自分の将来はもちろんのこと、この連載を読んでいただいている若い世代の方々のご両親に関係する重要な社会保障です。
今回の改正では主に短時間労働者と現時点で年金支給を受けている人についてかなり大きな変更がなされています。年金についていままであまり関心を持たなかった人も、自分のためそしてご両親のためキーポイントを理解しておく必要があります。一見するとなかなかわかりにくい年金の仕組みですが重要な変更点について、ポイントを絞って説明したいと思います。
■多くの世代の働き手に影響する年金改正
今回の改正で私が特に大きな変化だと感じているのは以下の3点です。
1.パートなどで働く短時間労働者への社会保険(健康保険+厚生年金)を適用拡大
2.60~64歳の在職老齢年金支給停止基準額の引き上げと65歳以上の在職定時改定の導入
3.年金受給開始年齢の引き上げ
この現役世代、その親世代に関係する改正について順を追って解説していきます。なお今回の改正では「確定拠出年金の見直し」も注目すべき改正点ですが、この説明は回を改めたいと思います。
■従業員数51人以上の小規模事業でも短時間労働者が社会保険の対象に
(2022、24年施行予定)
いま現役の世代に一番大きな影響を与えるのが、パートやアルバイトなどで働く短時間労働者への社会保険、つまり厚生年金と健康保険の適用です。
基本的に社会保険は、70歳未満(健康保険は75歳未満)で1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が同じ事業所の同様の職務をしている社員の4分の3以上(一般社員の所定労働時間が週40時間だった場合、おおむね週30時間以上)である者が対象となりますが、一定の条件下で短時間労働者にも適用されます。