2025年には希望者全員を65歳まで雇用することになるので、その前に「働き損」というイメージをなくそうと法整備をしたのかとも思われます。もちろん、収入が上がれば社会保険料や所得税なども上がりますが、それでも手取りは増えるでしょう。

■年金受給開始年齢の75歳までの引き上げで最大84%の年金増
(2022年施行予定)

 年金受給開始の年齢が75歳まで引き上げとなります。たまに勘違いしている人がいますが、これは「年金開始が75歳になる」ということではありません。基本的に年金の受給開始は65歳です。ただ、申請をすれば受け取りを60歳から開始することも、66歳以降にすることもできるのです。

 年金を60~64歳で受け取るのを「繰り上げ受給」といい、66~70歳に受け取るのを「繰り下げ受給」といいます。簡単にいうと65歳を境に早めに受け取る(繰り上げ受給)と受取額が減らされ、その逆に受け取り時期を先に延ばす(繰り下げ受給)と受取額が増えるのです。

 繰り上げ受給の減額は年6%、繰り下げ受給の増額は年8.4%。今回この年金が増額する繰り下げ受給がさらに引き延ばされ75歳までとなります。仮に75歳まで年金を受け取らないとすると、それ以降の年金が84%増となります。

 ただ繰り下げについては、本人の健康状態や収入など個人的な事情が大きく関係するので「繰り下げすれば絶対お得」とはなかなか言えません。

 75歳まで繰り下げた場合、単純に年金だけで計算すると65歳から受け取った場合に比べ受取額が「得」になるのはおおよそ87歳以降。さらに収入が増えることで、その分保険料や所得税などが上がりもらえる額面だけを見ると思ったより手取りは増えなかった(それでも増えることは確かですが)となることもあります。

 次回もすぐに役立つ社会保障について解説していきたいと思います。

(構成・橋本明)

※本連載シリーズは、手続き内容をわかりやすくお伝えするため、ポイントを絞り編集しています。一部説明を簡略化している点についてはご了承ください。また、2020年6月16日時点での内容となっています。

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小泉正典

小泉正典

小泉正典(こいずみ・まさのり)/特定社会保険労務士。1971年、栃木県生まれ。明星大学人文学部経済学科卒。社会保険労務士小泉事務所代表、一般社団法人SRアップ21理事長・東京会会長。専門分野は、労働・社会保険制度全般および社員がイキイキと働きやすい職場づくりコンサルティング。『社会保障一覧表』(アントレックス)シリーズは累計55万部のベストセラー

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