現在の日本マラソン界は、大迫傑の存在をなくしては語ることはできない。周知の通り、東京五輪2020は未曾有のコロナ禍の中で延期となり、本来ならば8月9日午前7時に鳴るはずだった男子マラソンの号砲も持ち越しとなった。しかし、今年3月の東京マラソンで自身2度目となる日本記録2時間5分29秒でゴールし、残り1枠だった代表切符を力強くもぎ取った大迫に対する期待感が下火になることはない。押しも押されもせぬ、日本のエースランナーである。
だが、その大迫も今年の5月に29歳となった。30代でも多くのランナーが世界のトップで活躍するマラソン界においては、まだまだ伸びしろを残していると言えるが、日本マラソン界の継続的な発展という点においては、常に“大迫以降”を考え、次の世代を育てておくことが必要である。大迫と同じ東京五輪代表の中村匠吾、服部勇馬、さらに代表を争った設楽悠太、井上大仁、村山謙太といったランナーはいずれも20代後半。少し気が早いかも知れないが、「大迫傑の後継者」については常に門戸を開き、台頭を促すべきだろう。
その候補者として、まずは下田裕太の名前を挙げたい。1996年3月31日生まれの24歳。青山学院大学で急成長し、箱根駅伝では2年時から8区で3年連続区間賞を獲得してチームの4連覇に大きく貢献すると同時に、2016年の東京マラソンで自身初のフルマラソンに挑み、10代の日本記録を更新する2時間11分34秒で日本人2位(全体10位)でゴールした。
大学卒業後はGMOアスリーツへ。スランプと言える時期も過ごしたが、今年の東京マラソンでは2時間7分27秒(全体13位、日本人7位)と自己ベストを大きく更新。他の上位陣が軒並み20代後半の中、今後の成長に期待を抱かせた。
その下田と同じ青山学院大出身で2学年後輩の吉田祐也も、今後注目のランナーだ。1997年4月23日生まれの23歳。箱根駅伝は4年時の1度のみの出場だったが、そこで4区区間賞の走りを見せた後、同年翌月の別府大分毎日マラソンに出場して学生歴代2位となる2時間8分30秒(全体3位、日本人トップ)でゴール。
競技の第一線から退くはずだった当初の予定を変更して現役続行を決断。下田と同じGMOアスリーツに進み、「2024年パリ五輪、2028年のロサンゼルス五輪のマラソン日本代表を目指します」と宣言した。