写真はイメージです(写真/Getty Images)
写真はイメージです(写真/Getty Images)

カップルカウンセラーの西澤寿樹さんが夫婦間で起きがちな問題を紐解く本連載。今回のテーマは「離婚のクーリングオフ」です。
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 もうしばらく前の話になりますが、中国の全人代で、香港版「国家安全法」の陰に隠れていましたが、中国民法典という法律が制定されたのだそうです。日本の民法と同じく、家族関係についても規定されており、同法では、離婚を届け出る夫婦は、届け出が受理されるまで1カ月待たなければならないと規定されているそうです。

 1カ月頭を冷やして考え直しなさい、という一種のクーリングオフ制度です。離婚率の低下を狙った規定のようですが、この施策に対しては、国家の私権への介入だという意見もあれば、もっと積極的に「結婚にもクーリングオフ期間を設けるべきだ」と主張する人もいるそうです。

 この背景には、中国でも離婚は増えてきており、着実に増加していることがあると思われます。そもそも中国で協議離婚が初めて認められたのが2003年で、その時は130万組だった離婚件数が、昨年は約415万組にまで増えているそうです。ちなみに、近年の日本の離婚件数は20万強なので、人口比ですでに日本の上をいっています。

 冷却期間を置けば、離婚が減るかといえば、想像ですが、少なくとも短期的にはYesです。もちろん、それが良いことかどうかは別です。離婚を減らしたい政府にとってはよいことでしょうけど、当事者にとっては、今すぐにでも離婚したい人々にとっては、嫌なことこの上ないはずです。

 この中国の話の場合、協議離婚の話ですから、双方が離婚に同意している場合で、そこに1月の猶予期間というのは、要するに親戚等が離婚を思いとどまらせるように説得するための時間だろうと思います。

 日本にはそんな制度はありませんが、事実上、これと同じようなことをするカップルは少なからずいます。「冷却期間として別居」をするカップルです。

 昇さん(仮名、40代前半、大手企業企画職)とゆかりさん(仮名、30代後半、事務職)は何回か「冷却のための別居」をしてきました。

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西澤寿樹

西澤寿樹

西澤寿樹(にしざわ・としき)/1964年、長野県生まれ。臨床心理士、カウンセラー。女性と夫婦のためのカウンセリングルーム「@はあと・くりにっく」(東京・渋谷)で多くのカップルから相談を受ける。経営者、医療関係者、アーティスト等のクライアントを多く抱える。 慶應義塾大学経営管理研究科修士課程修了、青山学院大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学。戦略コンサルティング会社、証券会社勤務を経て現職

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冷却期間は離婚抑止に有効か