この選挙にれいわから立候補した一人が、「女性装の東大教授」として知られる安冨歩教授だ。山本氏に初めて会ったのは16年、参院選に出馬したミュージシャンの三宅洋平氏の応援演説の場だった。そこで少し言葉を交わした以降は連絡を取り合うことはなかったが、昨年7月の参院選直前になり、山本氏から「選挙に出てくれませんか」とメールが届いたという。共通の知人の縁も感じて10人の候補者の一人となった安冨氏だが、新党結成の舞台裏はどんなものだったのか。

「基本的には、れいわ新選組という組織は存在しないんです。選挙をするには“政党”という入れ物がいる。そのためにれいわ新選組は生まれた。さすがに参院選後には組織を整えるのかと思っていましたが、そうではなかった。公的組織編成ばかりではなく、私的にもそうです。私は、山本さんばかりか、参院選の候補者と飲みに行ったこともありません」

 それでも、安冨氏は山本氏を政治家として評価しているという。

「組織ではなく、候補者や支援者の自発性に全てを委ねるのは、新しい組織論だと考えます。立候補したときには、公約に反対してもかまわないと私に断言しました。普通の党としてはありえないけど、あらゆる暴力、あらゆる差別に反対する彼の姿勢と一貫していると思います」

(本誌・西岡千史、上田耕司、吉崎洋夫)

週刊朝日  2020年7月3日号より抜粋

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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