西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「もう一つ先の希望」。
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【ポイント】
(1)がんが治ったら何をするかを問う
(2)治すことでなく、その先に希望を見いだす
(3)死についても、その先の希望を見いだす
がん患者さんが語り合う会でのことです。末期がんでギリギリのところまでいって生還した患者さんが、ご自身の体験を話してくれました。そのなかで彼はこう言うのです。
「先生のあのひと言で私の人生は変わりました」
ところが本当に申し訳ないことに、私は何を話したのか覚えていません。私にとっては普通のひと言だったのかもしれません。
彼によると、私はこう質問したのだそうです。
「ところで、がんが治って何をするのですか」
それを聞いてはっとしたと言います。
「そのときは、そんなことはまるで考えてもいませんでした。とにかく、がんを治すことで頭がいっぱいだったのです」
がんと診断されると、ほとんどの人は「どうやって治すか」に一生懸命になります。手術、抗がん剤はどうするか、再発を防止するにはどうしたらいいかなどなど、治すことを目標に設定して、それに翻弄(ほんろう)されます。しかし、治すことばかりに目がいってしまうと、思考の範囲が狭くなってしまい、「今のままの治療法で本当にいいのだろうか」などと治療への不安ばかりが募ってしまいます。
治すということをゴールにするのでなく、もう一つ先に希望を見いだすことが大事です。
治療が終わったら、こうしよう、ああしようということをイメージするのです。そういう自分の姿を思い浮かべることができれば、私がいつも自然治癒力にとって大事だと強調している「心のときめき」を生み出す余裕も生まれてきます。