しかし、本当の理由はイスラエル国民が休暇で外国に行くより国内で過ごすことのほうを政府が望んでいるからでしょう。コロナ危機は経済に非常に厳しい状況をもたらしました。多額の赤字、高い失業率を引き起こしています。イスラエル国内にも多くの観光地があります。美しい紅海に面した南部の都市エイラット、北部のガリラヤ湖、長い歴史を持つエルサレムや死海。政府は経済回復に寄与するために、イスラエル人にこうした場所で休暇を過ごすことを求めているようです。

 日本のレジャー政策について著作があり、早稲田大学で教えている米国人デイビッド・レーニー教授は、「日本政府は国民が休暇を取ることを奨励しているが、国内にいることを望んでいる」と言います。その理由は「日本の休日と祝日は国内旅行を励行するために作られた日数だ」と指摘しています。イスラエルも同じ道を歩んでいます。

 ここ10年来、少なくとも年に一度は外国に旅行するイスラエル人が増えています。なぜなら国内でのプレッシャーから束の間の逃避をしたいからです。現在、世界的に流行している新型コロナウイルスで国境は閉じられ、人々は重圧を感じています。望みうるなら、エルアルが運航を再開し、日本まで直行便で行けるようになってほしいですね。

○Nissim Otmazgin(ニシム・オトマズキン)/国立ヘブライ大学教授、同大東アジア学科学科長。トルーマン研究所所長。1996年、東洋言語学院(東京都)にて言語文化学を学ぶ。2000年エルサレム・ヘブライ大にて政治学および東アジア地域学を修了。07年京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修了、博士号を取得。同年10月、アジア地域の社会文化に関する優秀な論文に送られる第6回井植記念「アジア太平洋研究賞」を受賞。12年エルサレム・ヘブライ大学学長賞を受賞。研究分野は「日本政治と外交関係」「アジアにおける日本の文化外交」など。京都をこよなく愛している。

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