2019年5月、イスラエルの航空会社エルアルは、テルアビブから成田に毎週直行便3便を運航させると発表しました。2020年3月に開始する予定だったフライトは、16年越しの交渉のすえに実現しました。多くのイスラエル人は興奮しました。フライトを始めることをエルアルが決めたのは、両国間の観光客の増大でした。2019年にイスラエルに旅行した日本人は約2万人。日本を訪問したイスラエル人は4万人でした。フライト開始に合わせてエルアルは、厳格なユダヤ教徒のために宗教戒律を守った料理「コーシャ」を提供するため、成田空港の中に特別なキッチンを確保するほどの気合の入れようでした。
* * *
しかし、この コロナ禍ですべてのフライトが休止されて、いつ再開するのかも今ははっきりしません。そしてエルアルは経営の乱気流の中に突っ込み、国に補助を求めている状況です。今では国有化の話も出ています。
航空産業は、コロナによる影響を最も大きく受けている産業の一つで、おそらく回復局面は最後でしょう。イスラエルでも学校、店、レストラン、劇場ですら再開されているのに、国際空港(通常は最も忙しい場所の1つ)はまだ静かなままです。ヨーロッパのいくつかの国は旅行者のために国境のゲートを開きましたが、イスラエル人はおそらくあと数カ月間、国外に行けないでしょう。
イスラエル人は、旅行することが好きです。2019年、約900万の人口に対し、のべ920万人のイスラエル人が外国に行きました。複数回、国外に行く人が多かったのです。(ちなみに同じ年の日本では、1億2600万の人口に対し、2000万人が外国に観光に行きました)。ヨーロッパ以外で、イスラエル人が好きな場所の1つがギリシャの島々です。なぜならイスラエルで国内旅行するより安価に宿泊することができるからです。
ギリシャは国境を開くことを強く推し進めています。ギリシャの国家収入の多くは、観光収入です。 サントリーニ、ロードス、ミコノスなどの観光地は今、再び観光客の獲得に一生懸命です。 ギリシャのミツォタキス首相は6月、イスラエルを訪問しました。イスラエル政府と市民にギリシャへの旅を奨励するためです。首相は「ギリシャの島々には安全に行くことができる」と訴えました。しかし、イスラエル国内で外国旅行への兆しは全くありません。
どうしてイスラエル政府は国境を開くのに時間がかかっているのでしょうか。もちろん、国境を開いて「第2波」が発生するという懸念は確かにあります。欧州の他の国に比べて、イスラエルの状況は現在安定しており、自宅などに隔離されている患者は約5000人です。