一方で、昭和大学医学部客員教授の二木芳人氏は、「指輪によるデータだけで新型コロナかどうかを判断できるとするには疑問が残る」と指摘する。

「新型コロナ患者のデータをたくさん入れて解析すれば、ある程度の精度は出せるでしょうが、通常の肺炎やインフルエンザなど、新型コロナ以外の病気で上がってくる数値も含まれる。それを判別できるかというと難しいと思います」

 新型コロナは感染から発症までの間の症状が人によってまったく違うことも大きな壁になるとみる。

「ひどい肺炎を起こす人、軽い風邪の症状が出る人、そして、症状がない人。それぞれの患者さんの感染状態に応じて、3日前のデータを取らなければいけない。特に無症状の人のデータを集めるのは非常に難しい。それこそ実験的に感染させなければなかなか見つからないでしょう」

 新型コロナは発症前後の感染力が強いとされるだけに、3日前に確実に診断ができればクラスターの発生を抑えられると期待されるが……。

「発想としては面白く、確度が高ければ感染拡大を食い止める救世主になりうるかもしれません。しかし、何万人というデータを取らなければ確実性の高いアラートを出すまでの効果は期待できません。実用化には時間がかかるでしょう」
 
 国内では秋にも通信販売されるとの報道もあるが、次のような懸念もあると二木氏は言う。

「どの程度有益なのか検証がないまま利用されると、医療機関に人が殺到するなど、混乱の元になりかねません。おそらく健康器具として承認されないのではないでしょうか」
 
 救世主となるか否か、注視したい。

(本誌・秦正理)

※週刊朝日オンライン限定記事

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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