小泉正典(こいずみ・まさのり)/特定社会保険労務士。1971年、栃木県生まれ。明星大学人文学部経済学科卒。社会保険労務士小泉事務所代表、一般社団法人SRアップ21理事長・東京会会長。専門分野は、労働・社会保険制度全般および社員がイキイキと働きやすい職場づくりコンサルティング。『社会保障一覧表』(アントレックス)シリーズは累計55万部のベストセラー
小泉正典(こいずみ・まさのり)/特定社会保険労務士。1971年、栃木県生まれ。明星大学人文学部経済学科卒。社会保険労務士小泉事務所代表、一般社団法人SRアップ21理事長・東京会会長。専門分野は、労働・社会保険制度全般および社員がイキイキと働きやすい職場づくりコンサルティング。『社会保障一覧表』(アントレックス)シリーズは累計55万部のベストセラー
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病院など医療機関で支払った額が1カ月の間で一定額を超えた場合に、その超えた分を支給してくれる「高額療養費制度」。自己負担限度額は、収入や年齢によって変わる
病院など医療機関で支払った額が1カ月の間で一定額を超えた場合に、その超えた分を支給してくれる「高額療養費制度」。自己負担限度額は、収入や年齢によって変わる

 社会保険労務士の小泉正典さんが「今後いかにして、自分や家族を守っていけばいいのか」、主に社会保障の面から知っておくべき重要なお金の話をわかりやすくお伝えする連載の第5回。

【図表】知らないと損する!「高額療養費制度」はこちら

 前回はこの5月に決定した年金改正について解説しましたが、そのときに少しふれた医療の制度について、知っておかなければ大きな損をしかねない基本の保障を説明します。
 
*  *  *

 前回解説した年金と並んで、私たち全員の生活に関係する社会保障の両輪となるのが健康保険です。

 日本は「国民皆保険」なので、原則的には私たち全員が加入しています。「病院に行って保険証を出す」というのは、ごく当たり前な日常行為ですが、この時点で、窓口で支払ったお金は、幼児や高齢者の一部を除けば総額の「3割負担」になっているのは皆さんご存じでしょう。この「7割の保障」以外に、いくつもの保障制度があることを知っていますか?

 今回は、とくに医療費が大きな負担になる場合の保障についてお話ししたいと思います。

■社会保障は「自分で申請」しないと受けられない!
 
 これから医療の保障について解説します。最初に肝に銘じてほしいのは社会保障制度を活用する際のいちばん基本のポイントは、「申請しないと保障されない」ということです。

 たとえ数十万円、状況によっては総額で100万円以上が戻ってくる、もしくは最初から支払いの必要がない場合でも、健保組合などや自治体、もちろん病院もあなたのための手続きを自動的には行ってくれません。この連載で解説している制度を頭の片隅に入れておき、該当する場合は速やかに自分や家族が申請するようにしましょう。

■支払い困難なレベルの医療費を保障する「高額療養費制度」

 風邪やちょっとしたケガ、むし歯などを病院で治療したとき、1回の通院で自己負担額が1万円以上になることはそう多くないと思います。

 しかし大きな手術をしたり、高額な治療薬を投与しなければならなかったりする場合などは、その治療費が100万円を超えることもありえます。新聞やテレビで、家が買えるほどの金額になる抗がん剤の話題を見た人もいるかもしれませんね。
 

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「高額療養費制度」を使うと医療費が大幅に軽減も