■医療費が高額になる場合は「限度額適用認定証」の手続きを
説明してきたように高額療養費制度は非常にありがたい制度ですが、一つ難点があります。先ほどのように200万円かかった場合、3割負担とするとまずは窓口でいったん60万円を支払う必要があるのです。
もちろん申請をすることで限度額以上の分があとで戻ってくるのですが、各健康保険などの運営団体の審査の後となるのでおよそ3カ月後の支給となってしまいます。
一時的にではあれ医療費が大きな負担となるので、入院・手術など高額な費用がかかることが事前にわかっている場合は、治療に入る前に「限度額適用認定証」の申請をおすすめします。
限度額適用認定証は、高額療養費制度の計算のもととなる所得の区分を証明するもので、医療機関の窓口で提示することにより支払いが3割ではなく、高額療養費の限度額のみになります。医療費が200万円かかっても、60万円ではなく、最初から高額療養費の限度額9万7千円ほどを払えばいいのです。あとから払い戻しを申請する手間もかかりません。
急な病気や事故で限度額適用認定証がない、手元にまとまったお金もない、というときは、「高額療養費貸付制度」を利用するといいでしょう。これは当面の医療費を保険団体から無利子で借り受けるものです。
限度額適用認定証、高額療養費貸付制度とも、申請や問い合わせは高額療養費制度と同様、自分の加入している健保組合などや自治体窓口です。
■民間の保険を受け取ってしまうと高額療養費制度は受けられない?
テレビで盛んに民間の医療保険のCMが流れていますが、これらの保険に加入している人も数多くいるでしょう。高額療養費制度を受ける場合、このような民間の医療保険の支払対象となることもあると思います。
では、民間保険の保険金が支払われた場合、高額療養費制度はどうなるでしょうか。
「高額療養費制度が受けられない」「民間の保険金を治療費と相殺しなければならない」とたまに勘違いしている人がいますが、答えを言えば、民間保険は全く関係ありません。高額療養費制度を受け、また民間保険の保険金も受け取ることができます。
自己負担限度額を計算する際に、支払った医療費の金額から、民間の保険金の額を差し引かなければならないということもありません。
※税金の医療費控除制度とは別のものです。税金の医療費控除については、回をあらためて解説します。
医療に関係した社会保障は数も多く幅広いので、次回も引き続き解説したいと思います。
(構成・橋本明)
※本連載シリーズは、手続き内容をわかりやすくお伝えするため、ポイントを絞り編集しています。一部説明を簡略化している点についてはご了承ください。また、2020年7月1日時点での内容となっています。