1年延期になったとはいえ、来年夏に開催される東京2020オリンピック・パラリンピック大会に向けて、「暑さ」対策は重要な課題です。アスリートたちは、暑さの中でも最高のパフォーマンスを発揮するために、それぞれ対応策を講じていることでしょう。また、世界各地から集まる観客や、大会を支えるスタッフやボランティアの安全を確保し、熱中症を予防するための取り組みが進められています。現場でどんな準備がされていたのか、また参加者はどんなことに注意すればよいのか、日本スポーツ医学財団理事長の松本秀男医師に聞きました。
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例年、酷暑が続いている東京で、オリンピック・パラリンピックが開催されることが決まって以来、「暑さ」への対策の必要性が叫ばれてきました。新型コロナウイルス感染症の影響で、開催は1年延期となりましたが、ちょうど1年後の夏に本番はやってきます。
暑さに備えて、危険な熱中症の発生をできる限り少なくすること、そして発生した場合には適切な対応が取れるような体制づくりが求められています。
東京の暑さを見据えて、IOCはすでに対策を打ち出しています。競技を、朝から正午までの間、あるいは夕方の涼しい時間帯におこなうよう要請が出されました。また、昨年11月にはオリンピックを代表する競技であるマラソンと競歩の開催地が、東京から気温が5、6度低い札幌へと変更されました。9月に中東のカタール・ドーハで開催された世界陸上選手権で、酷暑を避けるため深夜におこなった女子マラソンで、4割もの選手が棄権する事態が起こったのが理由だといわれています。突然の開催地変更で大きな混乱が生じましたが、選手の健康を考慮しての決断です。
また、東京都でも、東京2020オリンピック・パラリンピックにおける「暑さ対策」を目的とした、東京都「暑さ対策」推進会議が設置されました。ここでも、アスリートが最高のパフォーマンスができるよう、そして観客が快適に観戦できるようにするため、さまざまな対策について協議をおこなっています。