熱中症を予防するためには、体温を下げるための工夫が必要です。そこで、「からだを冷やす氷や保冷剤の配布」「競技会場周辺や人が多く集まる場所に、テントや冷風機、クールミスト噴射などを備えたクールエリアの設置」「観客席への屋根の設置」「木陰の確保」などが提案されました。ボランティアの人たち用に、両手が使えるかぶるタイプの日傘なども、考案されています。
また、万が一の事態に備えて、会場には必ず、観客1万人あたり医師1人と看護師2人が待機する診療所が設置されることが決まっています。
熱中症から身を守る取り組みの重要性については、メディアを活用した情報提供がおこなわれています。
一方、選手たちは、暑さの中で自身のコンディションを調整し、メダル獲得を目指すことになります。多くの選手たちが、各競技団体のスポーツドクターやコンディショニングコーチの指導の下、栄養・水分補給状況や体重変化などを管理して、個別に水分補給計画やクーリングによるコンディション調整、暑さを想定したトレーニングなどを実施しているでしょう。最近のスポーツ科学により、運動時にはタイミングよくからだを冷やすことでパフォーマンス低下を抑制できるという研究結果をふまえて、専用のクーリングジャケットを活用している選手もいます。
パラリンピックでは、いくつかの競技に頸髄(けいずい)損傷などによる四肢麻痺の選手が参加しています。この障害の特性として、体温調整が難しいため、選手はベンチに下がった際に頸部などをアイシングすることが必要で、チームトレーナーがそれをおこなっています。またベンチ内には、選手の体温を下げるための大型扇風機なども設置されます。
熱中症というと、屋外の炎天下でなるものと思いがちですが、じつは蒸し暑い室内でも起こります。熱中症には、気温だけでなく湿度も大きく影響します。ヒトは汗をかくことで体温を下げて調節しますが、湿度が高いと汗をかいても蒸発しないため気化熱が奪われず、体温が下げられないのです。