「例えば、ドイツ政府は1日当たり20万件のPCR検査実施を目標に据えています。一方、日本政府が目標に掲げる検査数は1日2万件。ドイツの約10分の1です。検査の母数があまりに少ないため、現在発表されている新規感染者数も当てになりません」
大規模なクラスター(感染者集団)が発生したことで知られる永寿総合病院(東京都台東区)の湯浅祐二院長も、第2波への予防策として「PCR検査体制の充実」を挙げる。同病院では3月20日前後に最初の発熱者が発生。6月末までに患者・職員ら214人が感染、43人が死亡した。
7月1日の会見で涙ぐんだ湯浅院長は、感染を防ぎ切れなかった背景として検査体制の不備に言及した。
「感染の疑いがあっても、検査結果が出てこないことには闘いようがない」
「迅速な診断ができなかったことが感染拡大の一因となっていた」
第2波に向けた予防策については、こう述べた。
「必要な検査を迅速に行い、早急に結果を把握する体制を整えていきたい」
前出の上医師は、こうも話す。
「『3密の回避』『人との接触8割減』など、新型コロナ感染対策に関して国や都が掲げるスローガンは、全体的に科学的根拠に乏しい。単なる『思いつき』ではない、データに基づいた対策が求められています」
西村経済再生相は3日の会見で、検査体制などは確保されているとして「緊急事態宣言を発出するような状況にないと(政府専門家会議の)尾身(茂)氏と確認した」と述べた。現場の医師の声に、国や都はどう向き合うのか。(本誌・松岡瑛理)
※週刊朝日 2020年7月17日号