
大きな水槽にマグロなどが回遊する東京都の葛西臨海水族園(江戸川区)の建て替え計画が進められている。これに対し、いまの施設を魚が泳ぐ「水族館」として残すべきだとの反対論がくすぶる。
都が、水族園の建て替え計画の素案を公表したのは昨年末。1989年のオープン以来、来園者が伸び悩み、施設・設備の老朽化や維持コストなどの課題を抱えていることが背景だ。園内に新たな施設をつくり、2026年度の開園をめざすという。面積は2万2500平方メートルで、いまより16%拡張。整備費は244億~276億円を見込む。
これに異を唱えたのが日本建築学会だ。今年2月には、水族館として建物を残してほしい、と陳情書を都議会議長に提出。学会はこれまでも保存活用の要望書や、シンポジウムを開いてきた。いまの水族園は、米ニューヨーク近代美術館の新館などを手がけた建築家の谷口吉生氏の作品で、評価の高い建築物だとしている。
地元・江戸川区選出の上田令子都議も建て替えに反対の立場で、「スクラップ・アンド・ビルドの時代は終わり、いいもので残すべきものは直して使っていく時代です」と話す。谷口建築設計研究所からあった改修の提案を、都側が受け入れなかったとも指摘した。
都の担当者は次のように説明する。
「専門家による検討会の意見をもとにした計画の素案を昨年12月に公表し、今年秋をめどに正式な計画を出す方向です。あり方を専門家に検討してもらい、『建て替えるべし』との提言をいただきました。いろいろな課題があり、総合的に考えて建て替えることになりました」
そもそも谷口建築設計研究所からの提案は、いまの施設を水族館の機能を持ったまま残し、別の館も新設するというものだったという。専門家の検討会は、新設してまで巨大な二つの水族館を抱えることの意義を問題視。さらに東京五輪・パラリンピックの開催が決まると、都が抱える事業全体をゼロベースで見直すことになったことも計画に影響した。
都としては、いまの施設自体を活用できるかどうか、検討はしていくという。
葛西臨海水族園をめぐる一連の経緯に詳しいある事情通は、建て替えはやむを得ないとみる。
「バリアフリーの時代に、来園者用のエレベーターはなく、エスカレーターも1人用だけで時代にそぐわない施設です。現在の建物は維持するだけで巨額の費用がかかり、コストも考えた方がいいのではないでしょうか」
(本誌・浅井秀樹)
※週刊朝日オンライン限定記事