たとえば20年秋、ベトナム人女性の技能実習生が、死産した双子の遺体を自宅に放置したとして死体遺棄罪に問われ、有罪判決を受けていた。この元技能実習生の上告審で、最高裁が2月24日に、弁護側と検察側双方の主張を聞く弁論を開くことになった。
一、二審の判決によると、元技能実習生は熊本県内の自宅で、死産した男児2人の遺体をタオルに包んで段ボール箱に入れ、1日余り室内の棚の上に置き続けたのだという。
妊娠による強制帰国を恐れ、雇用先に妊娠を知られないようにしてきた実習生は少なくない。病院に行けず、孤立する中で死産を経験する例もあるだろう。彼女の事件は過酷な状況の一端に過ぎない。
技能実習生は安価な労働力として扱われ、非人道的な労働環境や処遇がこれまでも問題視されてきたのだが、政府は改革に着手しようとしなかった。
与党も野党も技能実習生の問題は見て見ぬふりをしている。移民問題に手を付けると強い反対が予想されるので、怖がっているのである。
グローバル社会において、外国人との共生は避けようもない。この際、抜本的改革に着手すべきではないか。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2023年2月17日号