高級バターが静かなブームだ。なめらかな口溶け、豊かな香りと深いコク、そして広がるミルク感。おうち時間に幸せを運ぶ、高級バター18種を集めたAERA2020年7月27日号の記事を紹介する。
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コロナ禍では、スーパーの店頭からさまざまなものが姿を消した。ステイホームで、時短ならぬ、手間も時間もかかる「時長調理」がブームとなり、家でパンやお菓子を焼く人が激増。小麦粉と一緒にバターのコーナーも、あっという間にガランとなった。
金融機関に勤める50代のシングル男性の朝食の楽しみは、トーストにバターをしたたるほど塗って食べること。だが、切らしたバターを買いに行ったいつものスーパーで待っていたのは、ぽっかり空いたバターの棚と、「入荷の予定はありません」という無情の案内。青くなってほかのスーパーやコンビニを回ったものの見つからず、最後にたどり着いた高級スーパーで、フランス産のお高い発酵バターを、しぶしぶ購入したという。だが、これが美味しかった。
「量を考えると、5~6倍はする値段にひるんだものの、初めて経験した高級バターの繊細な味わいのトリコに。もう元のスーパーのバターには戻れない体になりました」
実は高級バター人気は、数年前からジワジワ広がっている。パンやお菓子作りの材料や器具などを扱う「TOMIZ(富澤商店)」で通販サイトを担当する長尾絢乃さんはこう話す。
「品不足になるほどの本格的なブームは巣ごもり需要が始まった今年に入ってからですが、1~2年前から高級バターの人気は高まっていました。弊社でも30~50点のバターを揃えていますが、ほかにも高級バターを買える食材店やサイトが増えています」
実は長尾さんは、2018年にバラエティー番組「マツコの知らない世界」の「バターの世界」にも登場したバターマニア。畜産系大学を卒業後、就職した観光牧場で手作りバター体験のコーナーを担当。もともと大の乳製品好きだったが、そこでバター愛が爆発。今では日本屈指のバターマニアとして知られるようになった。
そんな長尾さんに、まずは高級バタービギナー向けのバター基礎知識を伝授してもらった。種類は大きく2種類。発酵バターと非発酵バターだ。
「簡単に言うと、生クリームを攪拌することで乳脂肪が固まってできるのがバター。その工程で乳酸菌を加えて発酵させるのが、発酵バターです。フランス産のバターのほとんどは発酵バター。一方、日本で一般的にバターと呼ばれるものは、非発酵バターです」(長尾さん)