クセのない味わいの非発酵バターに比べて、発酵バターの特徴は、発酵というひと手間が生む、独特なコクと香り。

「焼きたてのクロワッサンからフワ~と立ちのぼるバターの香り。あの奥行きのある香りが、発酵バターの香りと言いますか……表現が上手じゃなくてすみません(笑)」(同)

 いえいえ、長尾さんのお言葉に、ダイエットで断っていたクロワッサンのことで頭がいっぱいに。パン屋に走る準備を始めたところです。その前に、とにかく話を先に進めねば。

 もうひとつ、バターは「有塩」「無塩」に分けられる。パンに塗るなどしてそのまま食べるときは有塩を、料理やパン作りなどに使うときは無塩を選ぶのがいいそうだ。

 ほかにも、バターの味わいは「乳」を出す牛の生活によっても大きく変わるらしい。例えば、寒いところで育った牛は脂肪を蓄えるため、脂肪分の高い牛乳となり、脂肪分の高いバターが生まれるという。

 中でも牛がユニークな育ち方をしていることで生まれたバターが、最近よく聞く「グラスフェッドバター」だ。grass=草、fed=えさ(を与えられた)という名の通り、自然に近い環境で、草だけを食べて育った牛の乳から作られたバターのこと。不飽和脂肪酸の多いヘルシー系のバターとして知られ、数年前からブームになっている米国発の「バターコーヒーダイエット」に使う人も多いという。

「グラスフェッドバターは日本でもごくわずかですが作られていて、例えば岩手県のなかほら牧場は、牛が野山を自由に歩き回って生活していることで知られます。その牛乳のバターは、野草のカロテンを多く含み、色も驚くほど黄色いんですよ」

 さらに牛が食べる牧草の種類や牧草の育ちぶりによっても、バターの味わいは微妙に変わるという。テロワール(土壌)はワインの味を決める重要な要素として知られるが、バターについても同じことがいえるのだ。

 まだ品薄が続くバターのなかでも、比較的手に入れやすいものを片っ端から購入して、試してみた。いわゆる「高級バター」というくくりで集めたが、なかにはそれほど高くないものもある。富澤商店、デパ地下の食品売り場、また紀ノ国屋や成城石井のような高級系スーパー、カルディコーヒーファームなどの輸入食材を多く扱う店でも購入可能だ。

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