また、都立駒込病院で積極的におこなっているのが、切除可能境界や局所進行切除不能の膵がんに対する化学放射線療法。ゲムシタビンやS-1を使いながら、放射線を50グレイ(1回2グレイ×25日間)かける。
化学放射線療法が期待される背景には、膵がんの特殊性がある。間質という組織が多いため全体的に硬く、血管が少ないので抗がん剤や放射線が効きにくい。
「放射線と抗がん剤を併用することで、放射線に対する感受性が高まることがわかっています。この相乗効果でがんをたたく。注目されている治療です」(同)
問題は、膵臓の周りには小腸や胃といった放射線に弱い臓器が集まっているという点。それらの臓器に放射線があたると穴が開き、大量出血するリスクがある。
こうした合併症を予防するために近年、実施されているのが、IMRT(強度変調放射線療法)だ。事前の画像検査で得られたデータをコンピューター処理して、がんの形を正確に把握。それに基づき多方向から強弱をつけた放射線を照射することで、正常組織にあたる線量を最小限に抑えつつ、がんにより多くの放射線をあてることができる。
なお、膵がんを含む肝胆膵がんの手術に関して、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から回答を得た結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。同ムックの手術数ランキングの一部は特設サイトで無料公開。
手術数でわかるいい病院
https://dot.asahi.com/goodhospital/
(文・山内リカ)
≪取材協力≫
がん研有明病院 消化器センター肝・胆・膵内科 副部長 尾阪将人医師
がん・感染症センター 都立駒込病院 院長 神澤輝実医師
※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より