前出の梅原さんは、コロナ後の急落から持ち直しつつある最近の株式市場に注目する。

「上場するなら当然、株価が比較的高い水準にあるタイミングが有利です。いまは日本銀行の緩和策などで下支えされているとも言われていますが、これからは企業の業績が一段と下がり、雇用環境も悪化していくと考えられています。いつまでいまの水準が続くかわかりません」

 東京メトロは、鉄道会社のなかでも収益力が高い優良銘柄だ。

 コロナの影響を受けたため20年3月期決算は、営業収益(売上高に相当)が前年比0・4%減の4331億円、純利益が15・3%減の513億円。減収減益となったが、本業を通じて「稼ぐ力」を示す営業利益率は20%近く、業界で高い水準にある。売上高が3兆円近いJR東日本や1兆円超の東京急行電鉄など、ほかの鉄道大手より事業規模こそ小さいものの、乗客の多い都心部を走るため利益率が高いのだ。上場した場合の時価総額は「1兆円を超える」(市場関係者)との見方もある。

 コロナ感染が再び広がるなか、鉄道民営化による「最後の優良案件」の動向に目が離せない。

(本誌・池田正史)

*週刊朝日オンライン限定記事

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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