女性司会者の草分け的存在、芳村真理さん。数多くの人気番組で司会を務めたなかでも、20年続けた「夜のヒットスタジオ」の思い出を、古くからのお付き合いがある作家の林真理子さんが伺いました。
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林:芳村さん、どうしてらっしゃるかなと思ってたんですよ。ご主人(大伴昭氏=実業家)の介護をやってらっしゃると聞いてましたから。
芳村:亡くなりました。おととしの暮れに。
林:すごく素敵な方でした。私たち世代の憧れの的で、英語ペラペラ、歌もうまくて。
芳村:ジャズが大好きでした。
林:やることなすことすべてカッコよくて、いつだったか赤坂のピアノバーに連れてっていただいたとき、誰かが歌ったら、お二人で踊り始めて、まあそのカッコよさったら。
芳村:うふふ。でも厳しかったのよ。うちではね。
林:芳村さんが司会をなさっていた「夜のヒットスタジオ」、司会は何年ぐらい続いたんですか。
芳村:千回。
林:千回というと……20年ですか(1968~88年)。
芳村:それでね、マリコさんに見せたらたぶんなつかしがるだろうなと思って、あのころ私が着てた洋服のアルバムを持ってきたの。(2冊の分厚いアルバムをテーブルに置く)
林:(開いて)あっ、こういうのを残してたんですね。
芳村:本番の直前、スタジオの入り口でパッパッと写真撮ってたの。
林:なつかしい! エマニュエル・カーン、ジャン・ルイ・シェレル、ソニア・リキエル、クリツィア、ミッソーニ……。
芳村:あのころシャネルなんかがショーで日本に来ると、すぐ「着てください」って持ってきて貸してくれたの。それを毎回着てた。1週間に1着ずつ、オートクチュールを。
林:ふつうの人が一生に一度も着られないものを、毎週着てたってすごいです。20年も司会をなさってると、いろいろハプニングとか思い出もおありでしょう。
芳村:そりゃあもう、いろいろあります。新人が毎回一人必ず出るんだけど、私、今でも覚えてるのは新沼謙治さん。