杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』『「うつ」と上手につきあう本 少しずつ、ゆっくりと元気になるヒント』など。ツイッターのアカウントは@suginat
杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』『「うつ」と上手につきあう本 少しずつ、ゆっくりと元気になるヒント』など。ツイッターのアカウントは@suginat
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勉強が苦痛ならば、動機がなければやる気はどんどん落ちる。私たち親が「勉強する理由を説明できる」ということが必要だ
勉強が苦痛ならば、動機がなければやる気はどんどん落ちる。私たち親が「勉強する理由を説明できる」ということが必要だ

 自分にとって「やりたくない」と思っている行為を続けていくためには、なんらかの「動機」が必要です。たとえば毎日5 キロのランニングを継続するためには、「健康になれる」「体力をつけられる」というメリットを意識しなければ、難しいでしょう。理由もないのに、できることではありません。

 私が学生だったころ、継続できずにずっと悩んでいたものがありました。それは……学生の本分といわれる「勉強」。いったい何のために勉強するのか、努力する理由がわからなかったのです。 「学生は勉強するものだ」といわれるかもしれませんが、それは積極的な動機にはなりえません。大人だって、「社会人は働くものだから」という理由で働いているわけではないでしょう。生活するお金を稼ぐため、自己実現のため、という報労があるから働いているのです。お金ももらえず、何のために働くのか理由がわからないまま、「働くのが当たり前」といわたところで、「がんばろう!」と思える人なんていませんよね。

 やる気に関して、心理学では「エンハンシング効果」と「アンダーマイニング効果」と呼ばれるものが有名です。エンハンシング効果とは、あまり乗り気でない事柄には、外発的動機づけ(つまり外部から「金銭的な報酬」「賞賛の言葉」のような刺激を与えること)で、やる気が出てくる現象のことをいいます。対してアンダーマイニング効果は、自発的にやる気がある事柄に、物理的な報酬を与えてしまうと、逆にやる気がなくなる、というもの。

 優等生なら、問題を解けるようになることやテストでいい点をとることで、達成感が得られて勉強することに楽しみが生まれるかもしれません。しかし私は、高校で180人中160番あたりをうろうろし、テストで補習にひっかかるという典型的な落ちこぼれでした。劣等生にとって、「勉強する理由」がわからないのに、さっぱり理解できない授業を毎日何時間も受け続けることは、とてつもなく苦痛なものです。

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