競技スポーツを長い間続けていると、その種目に特定のスポーツ障害が起こることがあります。基本動作であるジャンプやランニングの繰り返しが、ひざや足の障害を引き起こす原因になる場合もあります。その代表例として、「ジャンパーひざ」「シンスプリント」「ジョーンズ骨折」の三つについて、日本スポーツ医学財団理事長の松本秀男医師に解説してもらいます。
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人間の限界に挑戦するトップアスリートやプロスポーツの選手たちは、日々ハードなトレーニングを重ねています。選手たちはみな、からだへの負担や疲労が蓄積しないよう、日頃からケアやコンディショニングを欠かしません。しかし、やはり人間のからだには耐えられる限界というものがあります。長期にわたって負荷がかかり続けることで、一定の許容範囲を超えてしまい、からだに支障が起こることがあります。
スポーツでは、「走る」「跳ぶ」「投げる」「蹴る」などの基本動作を、一定のフォームで繰り返します。各競技に特有の動作によってからだの特定の部位に大きな負荷がかかると、組織に慢性的な炎症や損傷が生じる場合があります。その結果、痛みや腫れ、骨や腱などの変性をきたして、スポーツ障害が起こるのです。
競技特有のスポーツ障害には、正式名称とは別に、「スポーツの種類+部位」で命名された通称がたくさんあります。その例には、「テニス肘(ひじ)」「水泳肩」「野球肘」「ランナーひざ」などがあげられます。
また、スポーツの基本中の基本といえる動作である「ジャンプ」や「ランニング」が原因で、常にからだを支えているひざや足に障害が起こるケースも多く見られます。今回は、その代表例として知られる、「ジャンパーひざ」「シンスプリント」「ジョーンズ骨折」の三つについて紹介していきましょう。
まず一つ目の「ジャンパーひざ」は、その名のとおり、ジャンプや着地を繰り返しおこなう人が発症しやすい病気です。ひざに痛みが生じ、重症になるほど痛みは強くなります。バレーボールやバスケットボールなど、長時間にわたりジャンプ動作を繰り返す競技に多く発生します。その発症メカニズムは、膝関節の屈伸動作により、ひざのお皿の骨(膝蓋骨、しつがいこつ)に付着する腱に繰り返し過度な伸長ストレスがかかり、腱の線維に微小な断裂が生じて炎症が起こるものと考えられています。