開催中のバレーボールW杯で新たに導入された"勝ち点"による順位決定方式が問題視されている。この大会は出場12カ国が総当たりし、3位以内に入るとロンドン五輪出場権が与えられるのだが、仮に11試合全勝でも、すべてフルセットでの勝利だと3位にもなれない可能性があるからだ。

「勝ち点の合計で順位を決めるのは他競技でもおなじみの方式ですが、問題は、フルセットまでもつれた場合の勝ち点なんです。勝っても2点しか与えられず、負けても1点与えられるため、勝利数が少なくても勝ち点で上位になるという不思議な状況が起こり得るんですよ」(スポーツ紙記者)

 既に終了した女子の大会の場合、最終戦を前に日本と中国は7勝3敗で3位を争っていた。最終戦は共にストレート勝ちで、勝ち点合計で中国が3位となり、五輪出場権を獲得した。

「もし最終戦で中国が2-3で負けて日本が3-2で勝っていたら、勝利数では日本が上回っていても順位は中国が上になっていたので、騒動になったでしょうね。問題のある勝ち点方式なのに導入理由もわからないんです。考えられるのは、中継するテレビの論理。リードされたセットで主力を下げて休ませる"捨てセット"があると試合がダレるので、それをさせないようにしたいのかも」(同)

 確かに、日本バレーボール協会に導入理由を尋ねても明確な答えはなかった。腑に落ちない話だと思っていたら、五輪を取材するベテラン記者が背景を説明してくれた。バレーボールに限らずさまざまな競技団体は五輪競技から外されてしまうことを恐れ、IOC(国際オリンピック委員会)に好まれるようにルールを変更する傾向があるらしい。

「IOCにとっては放映権料が大きな収入源なので、放送しやすく、わかりやすい、というのが五輪競技の大前提なんですよ。柔道の胴着が白と青になったのはわかりやすくするためだし、16年のリオデジャネイロ五輪から正式種目になるというラグビーが15人制でなく7人制なのは試合時間が短いからでしょう」

 時間制でなく、試合時間が長くなる競技はテレビ的に敬遠されるようだ。

「野球が外れたのも、実はその辺りに理由があるようです。サーブ権がないと得点にならなかったバレーがラリーポイント制になった理由は試合時間短縮で、この勝ち点方式も、やはり短縮化のためでしょう。だけど、勝利数が多くても順位が低くなるなんてあまりに不合理ですから、さすがに見直す必要がありますよね」(前出のベテラン記者)  (渡辺勘郎)


週刊朝日