■再発予防のために膀胱内注入療法
筋層非浸潤がんは、TUR-BT後、膀胱内に再発する可能性が高く、一部は筋層浸潤がんに進展する。再発予防のためにTUR-BT後、24時間以内に膀胱内に抗がん剤(アドリアマイシン、マイトマイシン)を1回注入する「膀胱内注入療法」が推奨されている。副作用として頻尿や排尿時痛などが起こり得るが、薬の作用は膀胱内に限定されるため、全身性の副作用が出ることはほとんどない。
T1と診断されても、実際は筋層浸潤がん(T2以上)である可能性があり、TUR-BTの4~6週後くらいに、がんの取り残しがないかを確認するセカンドTUR-BTという2回目の手術がおこなわれる。
その後、病理検査でT1かつ悪性度が高いもの、あるいはTisなどでは、再発を防止する目的で、BCG(ウシ型弱毒結核菌)膀胱注入療法をおこなう。BCGは結核の予防ワクチンと同じもので、膀胱内に注入することで膀胱内の免疫力が活性化し、がん細胞も攻撃して再発を防ぐと考えられている。抗がん剤との比較試験では、膀胱内注入での再発予防効果はBCGのほうが高いことが明らかになっている。
BCG注入療法は、TUR-BTの1カ月後くらいから、週に1回、6~8週間BCGを膀胱に注入する(=導入療法)。TUR-BT+抗がん剤膀胱内注入療法だけだと、膀胱内再発率が約5割なのが、導入療法で3割くらいに抑えられるという。
再発リスクが高いものには、さらに3~6カ月ごとに数回、BCG注入療法をおこなう場合がある(=維持療法)。
維持療法は1~3年続けることが推奨されているが、継続する排尿痛や膀胱萎縮など、強い副作用があらわれるため、中断する人も多い。また、膀胱の炎症などで血尿がある際には、結核菌が血管に入り込み、結核感染を起こすリスクもある。筑波大学病院腎泌尿器外科教授の西山博之医師は言う。
「1年以上続けられる人は約5割、3年間続けられる人は3割くらいでしょう。導入療法で再発が抑えられたらそこで治療を終え、再発時に再度、TUR-BTや導入療法を実施するという選択もできます」