膀胱内にがんが多発・再発しやすい膀胱がん。その診断の確定に用いられるのが、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)だ。尿道から内視鏡を挿入してがんを電気メスで切除し、組織を採取してがんの性質や進行度を見る。
性質や進行度によってTaからT4に分類され、粘膜の下にある筋層にがんが進行(浸潤)していないものがTa、粘膜下に浸潤はあるが筋層にまで達していないものがT1、筋層に浸潤のあるものがT2以上とされる。また、粘膜内に広がるように進展する上皮内がんはTisと呼ばれ、将来的に筋層浸潤がんへ移行しやすく注意が必要だ。
週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』では、非浸潤性の膀胱がんの治療について、専門医に取材した。
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最終的に膀胱がんと診断するには、TUR-BTを用いて組織を採取し、病理検査することが必要だが、TUR-BTはまた、治療という意味ももつ。
治療としてのTUR-BTは、Ta、T1、Tisにおこなわれ、膀胱がんの特徴の一つ、「多発」を見逃さず、がんを完全に取り切ることが重要になる。
とくにTisは、内視鏡下の普通の光源では判別しにくい。そこで、NBI膀胱鏡や、蛍光物質を用いたより精度の高いPDDがおこなわれる。PDDを実施している病院はまだ限られるが、Tisだけでなく通常の筋層非浸潤がんの完全切除にも有用と考えられ、今後の普及が期待される。
東京医科歯科大学病院腎泌尿器外科教授の藤井靖久医師は次のように話す。
「Tisは治療しないと5~8割が筋層浸潤性のがんになるとされています。PDDなどで可能なかぎりTisを見極め、適切な治療を始めることが第一です」
TUR-BTは通常、腰椎麻酔で手術時間は30分~1時間程度、入院期間は約5日間だ。合併症として術後の出血があるが、多くは入院中に止まる。まれに膀胱穿孔(膀胱壁に孔が開く)が起こるが、頻度は低い。