介助者は医療用の手袋をつけ、手で男性器を刺激して射精を促す。卑猥な言葉を言ったり、言わせたり、身体に触れる行為は一切禁止。料金は15分で3500円で、15分延びるごとに2千円刻みで割り増しになる。決して安くはない。
「最初は1時間くらいかかる人もいますが、慣れるとだいたい15分程度で終わる。スタッフには介護福祉士もいれば、元風俗嬢もいます」
当事者の思いを知るため、実際に体験させてもらった。
相手は新潟県に住む脳性まひの須藤昭夫さん(55)。3年前から利用するようになったという。射精するのは約1年ぶりだとか。
須藤さんの自宅にお邪魔し、介助がスタートした。
まずはズボンと下着を脱がす。敷いたタオルの上に座ってもらい、下半身をバスタオルで隠す。手袋をはめ、濡れたタオルで陰部を拭く。次にローションをつけ陰部を刺激。勃起したらコンドームをかぶせ、さらに刺激し射精を促す。
文字にすると簡単だが、お互い緊張もあり、射精までは40分かかった。
「時間かかってごめんね」
と、汗だくの記者をねぎらう須藤さん。採点してもらうと、「60点」と微妙な点数だった。
「射精しようと集中しながらも、介助者に触らないようになどと考えてるから難しいんです。さっきも思わず肩をつかみそうになり、『ヤバイ』って思った。脳性まひの人は物事に集中すると言葉が出なくなることがあるので、頭を洗うときのように『ここらへんでいいですか?』などと声をかけてくれると助かります」
須藤さんはホワイトハンズを知る前は、性風俗店を利用していたという。違いは何なのか。
「性風俗は僕にはトゥーマッチでした。僕は好きでもない女の人の裸を見たり、キスをしたりしたいわけじゃない。でも『たまる』という感覚はある。自分で射精ができれば一番いいのですが、できない。お風呂や排泄のケアと同じように、射精の介助をしてもらうことができれば、多くの障害者が楽になれると思います」
自身も脊髄(せきずい)損傷の障害を持つ県立広島大の横須賀俊司准教授(障害者福祉論)はこう話す。
「マスターベーションも介助の一環と認めるべきだと思いますが、障害者の性が介助だけで終わる必要はありません。僕はホワイトハンズのようにエロを欠落させ、健康増進のための射精では性的な欲求を満たせないと思う。性はエログロナンセンスが大きな部分を占めているからです。恋愛や結婚、性交、出産など、健常者が経験できることは障害者であろうと、あたり前に経験できる社会であるべきだと思います」
タブー意識をなくすこと。これこそが、障害者のセックスライフを充実させる近道になるのではないだろうか。
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京都出身の「おきばり(頑張り)」記者・小宮山明希(29)が、「これ、どないやねん!」と思った事件やできごとをシリーズでお届けしました。