智弁学園戦で150キロ台の直球を連発した中京大中京の高橋宏斗=撮影/松永卓也(写真部)
智弁学園戦で150キロ台の直球を連発した中京大中京の高橋宏斗=撮影/松永卓也(写真部)
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 阪神甲子園球場で行われている2020年甲子園高校野球交流試合は12日、前半の7試合を終えた。トーナメント戦ではないものの、例年と変わらず劇的サヨナラに初出場校同士のフレッシュな一戦、白熱した投手戦など、印象的な試合が続いている。

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 これまでの7試合から、交流試合だからこその特徴が見て取れたと語るのは、「流しのブルペンキャッチャー」として全国各地のアマチュア選手の取材を続けてきたスポーツライターの安倍昌彦氏だ。

「ここまでの試合を見る限り、投手有利と見える試合が多く、『打者受難』の大会と言えるかもしれません」

 7試合のうち、2点差以内の決着が6試合と接戦が続き、1チームの最多得点は明徳義塾の6点とロースコアが特徴だ。打者が苦戦しているのがわかるが、これはコロナ禍の影響ではないかと安倍氏は分析する。

「投手は個人で練習を調整できますが、打者は生きた球を見る機会が例年よりもはるかに少なかった。その意味では、予想できた展開ですね」

 新型コロナウイルスの影響で、各校は部活動の中止などで練習不足に悩まされた。例年ならば週に2、3試合組まれる練習試合もなくなれば、実戦経験不足にもなる。

「実戦経験不足は、特に球際のプレーで如実に表れました。智弁学園と中京大中京の一戦での幕切れはまさにその一例です」

 延長タイブレークの10回裏、無死満塁で内野に上がった難しくはない飛球を智弁学園の二塁手が落球。サヨナラ負けを喫した。他にも、挟殺プレーでの送球ミスなども同様の影響だと安倍氏は見る。

 社会状況が生んだ「打者受難」とはいえ、前提として投手の質が粒ぞろいなことは見逃せない。安倍氏は「過去の選抜大会と比べてもトップクラスの投手の質の高さ」と賛辞を惜しまない。智弁学園戦で150キロ台の直球を連発して鮮烈な印象を残した大会屈指の右腕・中京大中京の高橋宏斗は「別格」とし、他にきらり光る選手を聞いた。

「特に目立ったのは左投手。花咲徳栄の高森陽生や明豊の若杉晟汰は変化球でストライクが取れるし、何よりも直球に威力がある。ゆくゆくはプロでも……と期待したい投手でした」

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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