驚くのは、廃棄食材という響きとはかけ離れた、美しくやさしい色合い、豊かなバリエーション。純粋にファッションとしても魅力的で、ナチュラルで環境にも人にもやさしく、色落ちしにくいなど品質面でも妥協がない。

●次世代へつないでいく商社だからできること

 溝口さんは大学生の頃、バックパッカーでエベレストやトルコ、東南アジアなど、世界各地を巡った。広い世界、文化に触れ、さまざまな経験をしたことが、豊かな発想と実行力の両方が求められる仕事に生かされている。

「ルールのない旅が自信をくれたと同時に、ルールは自分で作らないといけないと思うようになりました」

 ファッションに関わる中で樹立されたサステナブルのテーマは、「次の世代が自分の消費行動を考えられるようにすること」。プロジェクトを次の世代へつなぐことが世界のサステナブルにつながると考え、20~30代をメンバーに起用し、「ビジネスとして確立させる」サポートをする。

「最もワクワクするのは、プロジェクトを作っている時。小さな種を心に持つ若手と『その種が育ったら何がやりたい?』と話す時です。『憧れのブランドとコラボ商品を作りたい』といった夢を、会社という土台で育てることで、実現できることが多いです」

 企業の規模や積み上げてきた実績を生かし、また、商社と取引先が組むことで、思いもかけないことが可能になるという。

「大きな課題はコストの壁。広く行き届くものでなければ本当のサステナブルにならないからです。また、社会全体の意識変革も必要で、それには教育も必要だと思います」

 その言葉が抱かせるのは、次なる予感と期待。ファッションを通したサステナブルの可能性は広がり続けている。
                                                  (文・石井聖子)

溝口量久(みぞぐち・かずひさ)
1972年名古屋市生まれ。早稲田大学商学部を卒業後、1996年豊島に入社。繊維原料部門の営業、インドネシア駐在を経て、2005年にオーガニックコットン普及プロジェクト「ORGABITS(オーガビッツ)」を立ち上げるなど、サステナブル推進の核を担う。

暮らしとモノ班 for promotion
台風シーズン目前、水害・地震など天災に備えよう!仮設・簡易トイレのおすすめ14選